数週間ほど前、某私立の中高一貫校から学校改革についてのお知らせが届きました。そのまま引用します。
記
1 2020年より、○○女子中学・高等学校を「男女共学」校とする。
2 難関大学合格者を大幅に増やすことを目標とした進学重視校とする。
3 グローバル化、AI社会を前提にした学習を行うとともに学習形態を一新する。
4 校名、校訓、教育方針、校歌、制服、校則などを変更する。
ずいぶんと思い切ったことをするものですね。86年もの伝統をきれいさっぱり捨て去り、新たな学校を作りなおすというのです。経営母体はそのままで。驚きました。
「共学化・制服の変更・新校舎」が私立の生き残り戦略の第1弾だとすれば、第2弾は「難関大学の合格実績」、そして第3弾はこの2,3年の傾向として「グローバル化、AI社会に対応した新カリキュラムの導入」が言わばお決まりのコースとなっています。
少子化という逆境の中で、私立は(わたしたち私塾も)大変な戦いを迫られています。
ただこうした一連の学校改革には、当然大きな限界が伴います。私立の先生方の奮闘は手に取るようにわかるのですが、グローバル化やAI社会に対応したカリキュラムの作成及び授業など、我々一般の教師には手に余る作業です。
難関大学の合格実績についても、ここに紹介した中堅校では荷が重すぎます。
ある程度というかかなりというか、それ相当の地頭と意欲がないと、難関大学を目標とすることに無理が出てきます。
皆さんがよくご存知の中堅どころ、X学園の受験コースは、20名前後の生徒数で、高1の段階から徹底的に痛めつけます。何しろ、拘束時間、宿題が多すぎます。高3になると4、5名しか残らず(皆ついていけず、辞めていくのです)、学校側の教育方針に疑問が残ります。
数日前も、中3の女の子が「私立Y高校の学校説明会に参加してきたのですが、行きたいと思いませんでした」と報告に来ました。ここも中堅高校ですが、理由を聞くと「話が大学受験のことばかりで、学校としての魅力が感じられなかった」とのことです。
一方、学校説明会では「チャレンジしたい子だけ来てください」「世界がこれだけ変わるときに、親としてどういう子になってほしいですか」と語りかける、今や時の人となった元公立の有名校長がいます。
帰国子女で、学習塾教師あがり、公立学校で最年少(36歳)の校長になった日野田直彦先生。
著書『なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか!?』(IBCパブリッシィング 2018年)が注目されています。わたしも実に多くのことを学ばせてもらいました。高等学校におけるグローバルな教育実践の先駆者といってよいでしょう。
氏の主張のいくつかを引用します。
「何を学ぶべきか?プログラミング教育とか英語だという人が出てくるのもわかります。ですが正直なところ、私はそれらもどうでもいいと思っています。それより大事なのはボ―ダレスであること、オープンマインドであること。できないと思わずにチャレンジできるかどうかだと思います。」
「教育に携わる私たちが絶対にしなくてはいけないのは、どんな失敗にもへこたれない子、タフネスな子にすること」
「どんな学生が欲しいかといったら、『Who you are』に答えられる人材、極論を言えば、他の誰とも違うクレイジーで変態な人材・新しいクリエイティビティをもつ付加価値の高い人材……」。
「最低限で数学とアート。そして歴史。そして体育(体力)」。
これらが子どもたち世代の期待される学生像のようです。頭の隅にでも置いておきましょうか。
それにしても「他の誰とも違うクレイジーで変態な人材」とはよく言ったものです。名句ですね。
ただわたしはいつも思うのですが、こうした希少価値のある人材というのは、経済的に恵まれ、親の学歴も高く、本人も”地頭力”をそなえた学生のことで、そうでない学生・生徒に対してどういったサポートをすべきか、悩まされます。いわゆる”努力”だけでは越えられない壁は存在します。
人間社会の不平等さにため息をついて、今年最後のブログを終了させていただきます。
毎度の拙文をお読みいただきありがとうございます。また、ご返事できなくて申し訳ありません。
冬期講習に全力投球します。皆さま、お身体には十分留意されて、良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願いいたします。
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