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フランクル先生から学ぶ「極限状況」からの脱出②~その愛~

2022.10.21 塾長ブログ

『夜と霧』におけるフランクル先生のLesson1は、「生きる目的」を哲学的、内面的に深化させて、与えられた責務を果たそうとすれば、この苦しみから逃れられるというものでした。

フランクル先生のLesson 2は、「愛する妻との語らい」ということに集約されます。すてきな愛の告白なので、長いですが書き記します。

「わたしは妻と語っているような気がした。妻が答えるのが聞こえ、微笑むのが見えた」「この耐え難い苦痛に耐えることしかない状況にあっても、人は内に秘めた愛する人のまなざしや愛する人の面影を精神力で呼び出すことにより、満たされることができるのだ」「愛により、愛のなかへと救われること!」

さらには、「心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんのいっときにせよ至福の境地になれる」と先生はおっしゃる。

皆さん、いかがでしょうか。自己反省を込めて、わたしたち男性諸氏の多くは、人を、妻(パートナー)を深く深く愛するトレーニングが圧倒的に欠けているのではないでしょうか。それ以前に、パートナーを愛するその内実が極めてあやふやなような気がします。熟年離婚を引き合いに出すまでもなく、改めるべきことが少なくありません。

脳裏の中での妻との語らいが、心から愛する妻の存在が、地獄のような状況を乗り越える糧そのものであったということ。愛し愛される二人の関係性そのものが、フランクル先生を絶望の淵から救った。

わたしがお薦めする本の1冊、『悲しみの秘義』(若松英輔 文春文庫)にはこんな1文があります。

「あなたに出会えてよかったと伝えることから始めてみる。相手は目の前にいなくてもよい。ただ、心のなかでそう語りかけるだけで、何かが変わり始めるのを感じるだろう。」

若松氏は日本を代表する随筆家、批評家、詩人です。早くに奥様を亡くされ、悲哀についてのすばらしい文章をわたしたちに送りとどけてくれます。愛する人を亡くしたとき、『悲しみの秘義』と『君の悲しみが美しいから僕は手紙を書いた』(河出書房新社)は何度でも手に取りたい。

フランクル先生のLesson2、いかがでしょうか。
まずは、身近な人への愛の告白を、直接的にではなく、婉曲的にもしてみましょうか。
愛の力は、無限なのですね。

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