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国語力・読解力について

2018.07.12 塾長ブログ

「万引き家族」(カンヌ最高賞受賞)の興行収入が半端でないそうです。ぜひ見に行きたいと思っています。是枝裕和監督を知ったのは14年前の作品「誰も知らない」です。巣鴨で実際にあった子ども置き去り事件を題材にしたもので、これも国内外の映画賞を獲得しました。私の中の感動映画NO1!です。

是枝監督ほどきちっとした社会意識を持つ文化人はめずらしい。「公権力とは潔く距離を保つ」「公金を入れると公権力に従わねばならない、ということになったら、文化は死にますよ。」と喝破します。権力者とぐるになって公金を平気で流用するどこぞの理事長や校長とは、人間としての厚みが異なります。

 

上半期の日本人スターの一人が是枝監督とすれば、あと一人は二刀流メジャーリーガー大谷翔平選手でしょう。アスリートとしての素晴らしさは言うまでもなく、若いながらも彼の人生哲学に惹かれます。

 

例えば1つには、ヤンキースに代表される超人気球団ではなく、二刀流に理解のあるエンゼルスを選んだことです。ブランドよりも己の生き方を貫きました。

 

2つは、あと1年待てば途方もない巨額の契約が結べたにもかかわらず、金銭よりもプレーそのものを選択しました。彼の野球に対する姿勢、そしてそれをそばで見守ってきたご両親に感服します。マサハル父さんは翔平にこう言ったのです。「あと1年、日ハムでプレーしたらどう。焦ることはないし。億単位のお金が……。」マサハル父さんの拝金主義は、翔平にものの見事に見破られ、大恥をかいてしまいました。子どもの方がよっぽど人生を極めていたのです。

こんなエピソードがあります。子どもの頃、お年玉で欲しいものを買うと、余ったお金を親に返したそうなのです。目的以外のものには全く興味がない。両親にどんな教育をしてきたか聞くと「何もしていません」「怒ったこともありません」とのことです(日ハム スカウト顧問)。

 

もう1つは、両親は小さい頃から、彼の好きなように任せ、おおらかに育てましたが、野球の監督だった父は小学校5年頃まで息子に「野球ノート」を毎日つけさせ、父がそれに返答する、言わば野球の交換日記を続けました。父は「書くこと」を重視し、また言葉を大事に深く考えさせるようにしていました(スポーツライター)。

あの日大アメフト部の監督に、爪の垢を煎じて飲ませたいですね。一方は言葉を大切にし、選手自身に考えさせる指導、もう一方は言葉のやり取りはなく、威圧と暴力の「指導」で選手を委縮させる。同じスポーツでありながら、正反対の方法論がとられていたのです。

 

 

今日ほど国語力であるとか、読解、コミュニケーション能力といった言葉にまつわる話題がこれほど耳目を集めた時代はなかったように感じられます。コミュニケーション能力については、新卒採用で「選考に重視したい点」の第1位(15年連続)を占めています。「企業が求めるのは相手の話をきちんと聞き、それに対する自分の考えを示しながら論理的に話し合う力、そしてコミュニケーション能力の中核として企業が重視するのは、『文章を書く力』です。依頼や報告、連絡などあらゆる仕事は『きちんと書く能力』を必要とする……」(大阪大学・川嶋教授)。

国語力や読解については、現在教育界で話題に上っている本があります。新井紀子という著名な数学者がまとめたものなのですが(『AIvs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社 2018年)、調査の結論として挙げられているのは、・中学校を卒業する段階で、約3割が表層的な読解もできない。 ・学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない。 ・読解能力値と進学できる高校の偏差値との相関は極めて高い、等々。

 

新井氏は小学校の英語教育やアクティブラーニング、プログラミングなどはやめて、“1に読解、2に読解、3、4がなくて、5に算数”と訴えています。7年前に「ロボットは東大に入れるか」と名付けた人工知能プロジェクトを立ち上げ、数々の賞を獲得した新井氏、やはり説得力があります。

 

「東ロボくんに散々ドリルをさせた私は自信をもって言います。読解力を身につけない限り、そこから先の成績は伸びません。読解力のある生徒が受験勉強に精を出し始めると、読解力のない子の相対的な成績は、むしろ下がる一方になります。東ロボくんも、いくら覚える英文の数を増やしても、英語の偏差値は(読解、特に文脈から判断する問題ができないため)50前後で伸び悩みました。」

数学者でありながら、文系的な範疇である国語力、読解力をひたすら強調している点、実に興味深いですね。学問のスターティングポイントは日本語の読解力にあり、と言うことなのでしょう。私の大学院での経験や塾のキャリヤから見ても、否定のしようがない指摘です。日本人にとって国語力・読解力を高めることが同時に、思考力を高めること、知的な活動を活発化させることに直結していることを強く再認識しなければならないと思います。

 

保護者の皆様にも、“国語力・読解力を鍛えないと、思考力も育たない”ことを今一度確認してください。

 

今からでも遅くはありません。子どもとともに、子どもの前で毎日、数分でも数十分でも本に向かってください。モデリング理論といって、親の模倣をするようになります。親の語彙力の豊富さは、子どもの知的発達を促進することはすでに心理学の知見になっています。また、脳科学の研究によっても、読書習慣が脳の発達を促進することが証明されています。できることから始めましょう。

 

新井氏同様、私も以前から英語の早期教育や小学校での教科化には反対してきました。様々なデータがあるのですが、結論のみを記しておけば、子どもの外国語能力は母語能力によって決まってくる、のです。国語力が十分に発達していれば、その能力を生かして英語を習得することが容易です。しかし、まだ国語力が十分に発達していないうちに英語にさらされると、期待ほどには習得できません。英語を勉強させるならば、その時間を日本語力の発達のために使った方が子どものためになります。

 

ご存知でしょうか。いまや世界の主流言語は?そう、母国語なのです。中国、韓国、インド、どの国もかつては英語教育にかなりのウエイトを置いていたのですが、「母語力の低下」「思考力の低下」などの理由から、母語による授業を大幅に増やしてきているとのことです。

本気で英語力を身につける、いつからでも遅くはありません。誰でも1年あれば、かなりのレベルまで行きます。あと何年かしたら、自動翻訳機・会話機のすごいのが出てきて、外国語の勉強は中学程度で済むかもしれません。

 

それにしても、2020年、英語が小学3年、4年に前倒しされ、5・6年生は教科化されます。片手間で安上がりな英語研修だけで、小学生にしっかりした授業が展開できるのでしょうか。危惧するのは、“英語嫌いの大量生産!”です。私とすれば、無の状態で来てくれた方がありがたいのですが。ウエルの小学生、英語塾は不要です。半年もしないうちに、通っていた子に追いつきます。私が責任を持って指導に当たります。

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