生きている実感が持ちづらい時世です。コロナ禍はひとの心のみならず、生活のあらゆる面まで侵食しています。お釈迦様は、生きることは苦であるとし、自分の思い通りにはならないと教えています。まさに普遍的な真理といってよいのではないでしょうか。
子どもたちの厳しい状況から見ていきます。
国立成育医療センターによると、小学4~6年の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状がみられました。また、小学4年生以上の子どもの6%が「ほとんど毎日」自殺や自傷行為について考えた、と回答しました。一方、回答した子どもの保護者の29%に、やはり中等度以上のうつ症状がみられました(2020年11月 「コロナ×こどもアンケート」第4回調査)。
2点ほど指摘しておきたいと思います。
1つは、こどものうつ症状には、大人と違って心身症的な視点が求められるということです。とりわけ児童の場合、自分の心情を言葉でもって適切に表現できないため、身体や行動に症状が現れてしまいます。夜尿、腹痛、倦怠感、不登校、攻撃行動、学習上の問題、等々。さりげない日常的なふるまいの中にサインがあるやもしれません。冷静、沈着なまなざしをもって見つめてあげて下さい。
もう1点は、子どものうつの生起には、親の要因が深く関与していることが多いようです。親自身の抑うつ的な傾向や、家庭環境、夫婦間の軋轢などが影響します。家庭が子どもの居場所や安全基地になっているか、自省を込めて今一度確認しましょう。
子どもの抑うつ傾向に並んで、児童虐待と自殺者数も過去最多になってしまいました。
18歳未満の子どもへの児童虐待は、30年連続で増え続け、昨年度は過去最大の205,029件。前年度より5.8%も多く、またタイプ別では「心理的虐待」が60%を占めています。この「60%」に何を見て取るか。追い込まれ苦しみあえぐ子どもたちのリアルと同時に、虐待にはしる親自身の生きづらさにも視線を注がなければなりません。
未熟な親を「バ〇親」呼ばわりして批判するのは誰にでもできる極めて安易、軽薄な行為です。同調圧力に弱い日本人は、特定の親を寄ってたかってバッシングして、溜飲を下げるのが好きな民族。
横道にそれますが、あの眞子さんの結婚。なぜ純粋に心から祝福してあげられないのでしょうか。宮内庁も結婚にまつわる皇族としての儀式をやらないとか。あまりにも気の毒です。そう、相手方の母親に問題ありとの事実だかどうかもわからない報道に国民(の一部)が誘導され、母親だけでなく彼にまであることないこと攻撃をしかける。憲法第24条「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し……」とあります。封建的なイエの拘束などは、もう‘時代’ではありません。
子どもが心して選んだ相手なら、尊重するのが道理です。自分が手塩にかけて育てた子ども、その子どもが選んだのです。あきらめる、いやいや祝福するしかありません。
本流に戻ります。
「親自身の生きづらさ」と書きました。コロナ禍にあって経済的に追い込まれている親は数知れず。また、親個人の資質的な問題や学習・経験不足などにより、子どもとの関りに難をもつ親もたくさんいます。「足の速い子もいれば、遅い子もいる。」と同じ論理で、子どもを生かす親もいれば、ダメにする親もいる。
大切なことは、後者の親をバッシングするのではなくて、まずこちら側のチームに引き込んで、苦しみや生きづらさを分かち合ったり、専門家を交えた子育てトレーニングにともに参加したりします。「対立と排除の発想」から「宥和と包摂の発想」に切りかえる時が来ているのです。親が変わらなければ、虐待は止まないのですから。
さて、子どもたちの厳しい状況の3点目は、「小中学生の自死者が過去最高のペース」になっていることです。今年7月までに自死した子どもは272人(小学生7人、中学生75人、高校生190人)で、昨年の同じ時期の241人を上回っています。暗数(いわゆる未遂)を加えると、272人の数倍にのぼる小中高生が自ら命を絶とうとしていたのです。
繰り返しますが、睡眠、食欲、体重の増減、疲労感、生気、笑顔、等に注視するとともに、やはりカギは日常の親子間の会話になります。
しかし、青少年の自死事例をみますと、上記のサインを発していないと思われるケースが少なくありません。推測するに、今の子どもたちは親思いで、親が大好きです。それゆえ、そんな親に迷惑や心配をさせまいと必死に隠すのです。親に知られまいと、最後のエネルギーを振り絞って‘善意の大芝居’をうちます。不憫でたまりませんね。
9月の第3週に生徒全員と今年度2回目の面接をしました。面接といっても数分のものですが、今回はうつや自死が増え続けている中、生徒たちのメンタル面でのコンディションを確認することに終始しました。マスクで表情を読み取ることができない分、目の動きに注意を払いました。キーになる問いかけのひとつが、「学校は楽しい?」です。わたしの未熟な見立てですが、ウエルのほとんどの生徒の反応は“良好”です。
ある女子生徒に「いま、さみしいこととか、心配なことはある?」と尋ねると、「埼玉にいるおばあちゃんに会えないこと」と。「おばあちゃんのこと大好きなんだね。」と返すと、ニコッと笑った大きな瞳で「うん。」 ほのぼのとしますね。
コロナ禍といううっ積とした日常や閉塞感の渦中にあって、やはり救いとなるのは人と人とのつながり、愛なのでしょう。愛し愛されるといった実感を抱けている人は幸いです。まずは身近にいる人へ感謝と愛を伝えたいものです。この女の子との面談で痛感させられました。
さて、まだ続きます。子どもたちにとって厳しい状況の4点目は、「コロナ禍の授業は難しすぎる」という学習上の問題です。日大の高橋智教授らの調査(今年6月)によると、「よくある」「時々ある」の合計の割合が、「授業の内容が難しすぎると思う」が53%、「授業の進み方が早すぎて、内容がわからない」は40%。小中高別だと、「難しすぎると思う」は小学生30%、中学生47%、高校生62%。「早すぎて、内容がわからない」は小学生19%、中学生35%、高校生48%で、いずれも高校生の割合が高い結果となりました。
日々、小中高生の授業に当たっているわたしからみますと、データとして驚くようなものではありません。コロナ以前でも同じような数値になったと思われます。紙幅の都合上、1点のみ指摘します。最新の文科省の調査で、小学6年生の「学校を楽しいと思う」という割合が減っています。当然でしょう。学校行事が中止や延期、縮小になったり、給食の黙食をはじめ友達と触れ合う機会が制限されているのですから。つまらなくなったし、コロナでストレスも抱える。こうした状況下にあって、勉強や授業に本気で取り組めるようなエネルギーは出てきますか?こうした勉強への後ろ向きな態度が「難しい」「わからない」という意識につながったと考えられます。
小中高生の現状を見てきました。比較するつもりはないのですが、いまの大学2年生はもっと悲惨な状況下にいます。ほとんど大学に行けていない2年生が多くいます。サークル活動も、コンパも恋愛も夢のまた夢。なにしろ生身の人間との交流が極めて希薄なのです。東京のアパートを出払って、実家でオンライン授業を受けるようにした学生もいます。コロナ感染の悪人にされたり、ワクチンを希望しても打つことができない。すべて政治の責任です。学生よ、怒れ! 立ち上がれ!
最後に、もっともストレスにさらされている人、そう、お母さんです。
家族みんなの健康や体調を常に気遣い、自分の体調を度外視して家族みんなを守り続けます。塾を含めた教育費の負担をそれこそからだを張って都合をつけようと奮闘しています。少しでも勉強のできる子、良い子になるよう応援し、また周りからのプレッシャーにも耐え続けます。
わたしの大好きな寂聴さんがこんなことを記しています。
「幸福になるためには、人から愛されるのがいちばんの近道です。そのためにはまず、自分が自分を愛さないといけません。よくがんばっているなと、自分をほめる。そして自分が幸せな気分になるのです。」
お母さん、よくがんばっているなと、おおいに自分をほめてあげて下さい!!
ほめて育てるのは、わが子とともに、お母さん自身も、です。
9月 事務上の御連絡
①保護者の皆様との“お話”(今年度2回目)は、11月中旬以降に予定しています。追ってお知らせいたします。尚、近日中の面談をご希望される方はご連絡下さい。
②中3対象の保護者会は11月初旬に開催いたします。
③塾への連絡はなるべくメールにてお願いいたします。最近では欠席や遅刻の連絡以外に、わたし個人への私信も多くなりました。すべてに返信いたします。お気軽にどうぞ。
④当学院の“ウリ”の1つが、金曜日以外毎日開いている『質問教室・個人指導』(19:30~21:50)です。優秀な講師が個人指導をしてくれます。学校の学習内容、英検・数検、なんでも構いません。特に理解不十分な生徒は大いに活用を! なお、コロナ禍にあって、本人を含め御家族の体調に不安を感じられましたら、通塾は控えてください。『質問教室』(小学部は「振り替え」)で補習をします。
⑤当学院のHP(ホームページ)に不具合が生じ閲覧ができず、御迷惑をおかけしました。近日中に復旧いたします。
⑥少子化の中、生徒募集に苦戦をしいられております。どしどし御紹介下さいませ。とても助かります。
ウエル学院 塾長 平野雅春
お問い合わせ
0120-630-133