合格実績を同封しました。
わたしの各受験生に対する評価は、「どこに合格したかよりも、受験とどう向き合ってきたか」にあります。
中3生は、1人が都立に受け入れられませんでした。最後まで懸命な努力を重ねてきましたが、2倍というとてつもない倍率、そして男子には不利とされる「男女別定員制の緩和」校であったこと、残念で仕方がありません。
一方、大学受験は先月号でもお知らせしましたが、文系が厳しい、いや厳しすぎた。進路変更せざるを得ない生徒も出てくるかもしれません。
さてここ数年の現象と言ってよいのか、日本社会全体が子どもに対して不寛容になっているように感じられます。
2年ほど前にマスコミの俎上にも載った「電車内のベビーカー問題」。
畳む/畳まないというマナーの問題にとどまらず、「こんな時間帯に赤ちゃんづれで乗ってくるな」「泣かせるな」「チィッ!という舌打ち」、こんなあからさまな態度を取られたとの報告が多数挙げられました。相手は50代以降の男性が多く、若い男性も結構いたそうです。
「快・不快」の感情が先走ってしまう論理性なき男性諸氏の未熟さ、とりあえず、自己反省を込めてこんな批判を浴びせておきましょう。
「ラッシュ時のスペースには限りがある」「朝からガキの鳴き声はごめんだ」、まあ、100歩譲って感情移入だけはしてあげましょう。
しかし、よく考えよ、と。電車は公共交通機関であり、誰もが、いつでも利用できるものという当たり前のことを。さらに、赤ちゃんは泣く存在そのものということを。簡単には泣き止まないのだ。舌打ちするあなたもそんな時期があったはず。
日本にやってくる外国人は異口同音に「日本人はとても親切だ」と言ってくれます。
そんな表層的な親切心に騙されてはいけない。
“快・不快”“好き・嫌い”という感情が絡んだ時の日本人、きわめて不親切、不寛容な人間に変貌してしまうのです。
現在は、児童養護施設や保育園に対する地元の反対運動が気になります。
防犯だとか、騒音だとか、不動産価値だとか、日本の政治が官邸主導の独裁的で、弱者切り捨ての方向に流れているのと時を同じくして、一部日本人の排他的な利己主義が目に余るようになってきました。
そう感じませんか。政治に優しさがないと、国民全体が他者に対して優しさに欠けるようになるのです。
教育部門で今売れている本。
『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』(高橋孝雄 マガジンハウス 2018年)
いつも題名に騙されて買っては後悔するのですが、この本はわたしが常日頃強調している内容とかなりの一致点があり、またドクターにしては稀有なのですが、生活保護家庭に育ち(父が4歳のときに脳腫瘍で逝去)、まさしく苦学生であった点にもひかれます。
子どもは3人いて、3人とも地元の保育園から公立小学校、公立中学校と進みました。あえて私立の中高一貫校に行かせなかったこともこのドクターの教育方針の魅力のひとつです。
偶然、こんな記述に出会いました。「“子どもアレルギー”のような社会は、どの世代にとっても暮らしやすいはずがない。見も知らぬ子どもに『ここにいてくれてありがとう』と感謝する。子どもに共感できることが、文化度の高さだとぼくは思います。」
文化度と言えば、出生率を1.66から、15年で2.0を超えるまでに回復させた国、フランス。
働くお母さんの出産から子育て、生活面まで全面的にバックアップする『シラク3原則』が有名ですが、その根本には「赤ちゃんはフランス文化を守る社会の大切な宝」という思想が存在しています。フランス国家にとって「赤ちゃんは宝」なのです。
それに対して、日本の現政権はどうでしょう。
「大企業と富裕層、そして自衛隊が日本の宝」、こんなところでしょうか。
赤ちゃん、子ども、そして働くお母さんに対するまなざしそのものが、根本から異なっていると言わざるを得ませんね。
「赤ちゃん、子どもは宝そのもの‼」、「生まれてきてくれてありがとう‼」
私たち親は今一度この原点に立ち返ることが求められているようです。
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