塾長ブログ

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小学生と英語

2013.11.16 塾長ブログ

2002年度、総合学習の一環として英語が始まりました。そして2年前より小5、小6で必修化されました。

私も何度か授業をのぞきましたが、歌って踊ってゲームをするなど「国際理解教育」という謳い文句には程遠い“お遊び授業”でした。

訓練されていないALT(外国人の指導者)もいたり、何よりも担任教師がALTを活かしきれていません。当然です。担任はあくまで小学校の教諭であり、英語の教授に関しては素人です。実に気の毒です。文科省はこういう酷な施策を平気でやるのです。

2020年には、小3小4で週1,2回、5,6年では週3回に増やし、正式な教科にするとの方針案を先月に発表しました。

初めに私の立場を明らかにしておけば、現状の小学校での英語教育は不要です。百歩譲って、週1回程度のお遊びEnglishなら良しとしましょう、子ども達の息抜き教科として。しかし、教科化には反対です。

小学生やその保護者から英語塾(週1、2時間程度でお遊び的な)についての質問を受けると、「お金の無駄遣いになるので、通わなくて結構です。」とお答えしてきました。その論拠は?

端的に言えば、目に見える成果が出ていないのです。 だいたい中学1年の秋頃には、英語塾に通っていた生徒とそうでない生徒の差はなくなってしまいます。お遊びEnglishだから仕方がないのです。土台(英文法、読解能力)なきコミュニケーション中心主義の英語教育では、日本人の場合いつまでたっても英語をものにすることはできません。

小学校の英語推進派である日本児童英語教育学会の調査(中高生849人対象)でさえ、発音、知識、運用力のいずれにおいても、両者の間に目立った差がないことが判明しています。

私の直接経験からくる実感および数々の調査からも、週1,2時間程度の勉強では何の実益も得られないということです。逆に、中学生に英語を指導する者にとって最も恐れるのは、小学生時代の英語の授業によって、“英語嫌い”や“英語コンプレックス”の生徒を作り出してしまうことです。

教科化されたら大変なことになります。一人ひとりに成績を付けなければなりません。言語吸収力に劣る子、全体的に学力の低い子、英語塾に通えない子、英語に興味を失ってしまった子など、英語嫌悪・拒否層が大量生産されることが目に見えています。この層が一挙に中学校にやってくるのです。

次の一言だけ覚えて頂ければ、すべてが解決します。すなわち、中学・高校と私の授業を受けてくれさえすれば何の心配もなくなります!?(笑)

 

営業妨害になってしまう恐れがありますので、付け加えておきます。小学生が楽しく英語塾に通っていれば、それはそれでOKです(私でしたら、体を作ることを優先し、スポーツ、武道系に月謝を使いますが)。また、学力的に不安定材料を抱えている子にとっては、中学英語の予習としていいかもしれません。これも「楽しい」、「いやでない」ことが前提です。

日本人の英語音痴や英会話下手は、よく言われるところの「文法偏重の英語教育にその原因がある」と一般的に考えられています。しかしこれは、英語の教授について無知な人たちの誤った言質です。

日本人にとって、外国語を使いこなすまでの困難さが理解されていません。

1つ目の困難さは、日本語と英語の構造上の異質さが挙げられます。表記、音韻、統語体系が全く異なるのです。そう簡単に第2外国語を獲得することなどできません。

2つ目の困難さは、言語的な環境にあります。会話力は格闘技やテニスなどのスポーツと同じく、相手との直接的な練習、ぶつかり合いなしには決して上達するものではありません。それも毎日何時間も。こうした環境が日本にはありません。

このように英文法中心の学校英語ないしは読解中心の受験英語が、英会話下手を再生産しているのではなく、そもそも英語上達のための環境が全くと言ってよいほど整っていない、ということなのです。

フィリピン、シンガポールなどのように、日本も米英の植民地支配を長きにわたって受けていたら(!?)、あるいはお隣の国が英語圏であったら、英語達者の多い国となっていたことでしょう。

さて、ここにきて何ゆえに「小学生の英語」の問題が浮上してきたのでしょうか。

考えられる理由の1つは、財界からの圧力です。昨年のグローバル人材育成会議の提言を見ても、英語教育の重要性が前面に出ています。言うなれば、財界の利益になるような人材を早期から育ててほしい、という要望です。財界と癒着している政府にとっては、応えなければならないのです。

2つ目として、「外国語は早い時期から始めるほど上達が早い」あるいは「子どもは大人より言語習得が容易」などといった迷信に、国民全体が誘導されているということを改めて指摘しておきます。

誰が誘導してきたか?幼児英語を推進してきた教育産業です。脳科学や認知心理学理論(例えば「臨界期」、「敏感期」など)を都合のいいように曲解し、著名な教授を客寄せパンダにして、若いママさん達から月謝をくすねてきました。

言語学習に「臨界期」(学習をするのに最適な時期)などない、というのが学会の通説になっているにもかかわらず、今もってママさんたちを駆り立て続けています。

私は小学生の時期に英語を勉強させるな、と言っているのではありません。条件が整えばゴー・サインを出したい。誰が、どのように、いつから、どの程度の頻度で、どんな英語を教えるのか。また中学英語との連繋や教員養成等々、国民的な議論をたたかわせながら、1つひとつ丁寧に練っていかなければならないと考えています。いかがでしょうか。

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