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我が子は大器晩成型

2016.03.17 塾長ブログ

昨年度の都立入試(普通科)は、過去最高の実質競争率になりました。男子=1.45倍、女子=1.49倍。ウエルの3年生がねらう高校はさらに高倍率で、平均をとると、5人中2人が不合格になる実に厳しい入試でした。中3生も、高3生も最後の最後まで闘う気持ちを失うことなく、懸命に立ち向かっていきました。願いかなわなかった生徒も、これまでの努力が否定されたわけではありません。胸を張り、視線を高く保って与えられた環境の中で、自らを発揮してもらいたいと思います。

先日、教え子の高校生が訪ねてきました。スポーツ推薦で私立A高校に入学し、寮生活をしています。中3当時、進路についてお母さんから相談を受けたのですが、私の結論は総合的な観点から“都立”を薦めました。主な根拠は、本人のスポーツ選手としての力量、A高校の根性主義的な体質、本人の性格と高い学力から、都立上位校で部活と大学受験を両立させる生活のほうが、有意義な青春を送れるのではないか、等々。

高1時代の寮生活は厳しい。6時起床で軽いトレーニングに始まり、午前中4時間だけ授業を受けたら、昼食をはさんで日が暮れるまで練習。夕食後も自主練があり、床に就けるのは決まって午前2時半。先輩の練習着やユニフォームの洗濯です。限られた台数の洗濯機しかないので、かなり時間がかかるのだそうです。

特にきつかったことは? 睡眠不足とともに、「食事と練習でのコーチの罵声、あとはホームシックです」。寮の食事(毎月25000円)はまずいだけでなく、寮長の監視のもとドンブリ飯を何杯か平らげるまで食べ続けなければなりません。食後には何人もの犠牲者が出て、トイレでゲーゲー始めるのだそうです。実は、彼には話してあったのです、A校の○○部のばかげた体質を。スポーツに科学性や論理を持ち込めない根性一色の部活だということを。

 

「A校に行ってよかった?」と直截に聞くと、「はい」と即答することはできませんでした。彼を含めて5名がスポーツ推薦で入ったのですが、すでに3名はやる気を失い、今後の身の振り方に悩んでいます。余談ですが、スポーツ推薦で入学した生徒が退部してしまうと、その学校にはいづらくなり退学することが多い。また、残る場合は、これまでの授業料(免除分)を全額返納しなければなりません。

それにしても、健康であるべきスポーツ選手を不当な睡眠不足に追いやり、無理矢理ご飯を詰め込ませ、理不尽な檄で心も体も支配する。選手個々の主体性や思考力は破壊され、真のアスリートは育ちません。オウムや日本の軍隊、ナチスドイツといった強圧的な集団を思い起こさせます。仮にスポーツエリートが育ったとしても、後々、覚せい剤やら野球賭博にはまってしまう理性の働かない人間になっては元も子もありません。

清原ついでに芸能ネタをひとつ。すでに遠い過去の出来事のようですが、SMAPとベッキーの騒動について。芸能事務所とか不倫という問題はさておき、日本人の謝罪とか攻撃性について感じることがあります。それは、両者とも自ら非を認めるのであれば、関係する当事者に直接頭を下げればよいのであって、何も全国に流される公共放送に出る必要は全くない、ということです。私も見ましたが、あれは“さらし者”以外何物でもありません。社会による“集団リンチ”です。確かに不倫は人を深く傷つけるという意味で、許されない行為です。しかし、「社会」(マスコミ)があたかも当事者になり代わって断罪するかのような、制裁を加えてもよいという論理は成り立ちません。多くの日本人が、あの謝罪会見を見て溜飲を下げているようであれば、ちょっといただけません。民度の低さを痛感します。

有名人にしろ、芸能界にしろ、われわれとは異質の世界に住む人達を、社会常識という単一の物差しを持って計り知ること自体ナンセンスです。芸能界に限らず、政治の世界にも理性なき人間がいるものです。国会でも取り上げられました。

保育園落ちた日本死ね!! 何だよ日本。一億総活躍じゃねーのかよ。 昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私  活躍できねーじゃねーか。…… 不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。  オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。……      どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。  マジいい加減にしろ日本。(以下省略)

言葉は乱暴でも、怒りの魂が入ったまっとうな檄文です。状況分析も適切で、心から同感します。で、あのアベチャンの答弁はというと、「匿名である以上、実際本当に起こっているのか、確認のしようがない」と野党の女性の質問者を相手にしませんでした。さらに、この場面での自民党議員のヤジはすさまじく、「出典は?」「本人を連れてこいよ!」などと、待機児童を抱えるママさんたちの気持ちを逆なでするかのような横暴な態度でした。

匿名だとか出典などは問題ではないはず。待機児童が増え続け、保育園に入れず、ママさんたちが苦労に苦労を重ねているという社会的な現実に、何ゆえ自民党のゲス議員たちは想像力を働かせることができないのでしょうか。ヤジを飛ばした議員をそれこそ“さらし者”にして、マスコミの餌食にした方がよい。「アホノミクス」に「アホ議員」、ほんとに困ったものです。

アベノミクスの「成果」とは? 強者と金持ちには優しく、中間層・下層の私たちには実に手厳しいものがあります。リストアップしてみましょうか。①貯蓄ゼロ世帯が18%増 ②ワーキングプア45%増 ③労働分配率10%減 ④生活保護世帯 過去最高を更新 ⑤経済的な理由による高校生の中退者の増加 ⑥奨学金という名の借金に苦しむ大学生・学卒者の激増 ⑦非正規労働者の激増、等々。これをアベノミクスの破綻と呼ばず、何と言ったらよいのでしょうか。これほどまでに経済的な困窮者が増えている中、憲法改正だの一億総活躍だの時代錯誤も甚だしい。介護問題を含めて、急迫の課題が山積しているはずです。そうは思いませんか!?

さて、最後のテーマは教育です。御存知の方も多いかと思いますが、2020年から大学入試が大きく様変わりします。新中学2年生と新小学4年生の2段階で変わっていきます。現行の大学入試センター試験は廃止され、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)となり、それと連動して私立や国立大学もこれまでとは質的に異なる個別の入試が行われます。

こうした一連の教育改革の背後にあるのは、グローバル化や情報化といった社会の、世界の流れです。わかりやすく言えば、これまでは暗記量が豊富で、まじめな受験エリートがリーダーとなって社会を下支えしてきたと言われますが、グローバル化と情報化時代にいたっては、無から有を創造できるようなクリエイティブで、オリジナリティ豊かな人材が必要とされるようになりました。マニュアル人間ではなく、問題解決型というのでしょうか、自ら発問し、自ら解決していく、こういった思慮深く行動的な働き手が経済界から求められるようになりました。文科省は繰り返し、「厳しい時代を乗り越え、新たな価値を創造していくため、知識量だけでなく、『真の学ぶ力』が必要」とアナウンスしています。

ある意味、日本の教育政策の多くは、政権と癒着している財界からの要望ととらえてまず間違いありません。蛇足ですが、ここ2,3年で大企業から自民党への献金が62%も増え、役員報酬(1億円以上)の総額も57%増加しています。内部留保(企業の預貯金)は総額で10%増えています。これらの数字が物語るように、アベ政治は紛れもなく強者を富ますだけで、一般大衆は残念ながら眼中にありません。財界主導の政治であり、教育なのです。日本の教育全般を考えていくとき、こうした視点を持つことによってより理解が深まっていきます。

話をもどしましょう。2月に文科省が発表した「評価テスト」の問題例を見ますと、センター試験とは質的に大きく異なります。センター試験は、スピード、慣れ、記憶の引き出しという3つのポイントをおさえて学習を進めれば、それなりの点数が取れるように作成されています。一方、「評価テスト」はパターン化されていない出題内容で、思考力やそのプロセスが試されています。解答は記述式が基本路線で、記号問題は排除されています。図や表を読み解き、自分の考えや意見をまとめたり、数学や物理では、いわゆる解法パターンの暗記や公式を当てはめるといった対処法では通用しない問題内容になっています。より深い思考力と記述力が試されてくる、こうとらえてよいでしょう(一言付け加えておきます。新中学2年生が評価テストの一期生になります。新中学3年生! 浪人すると評価テストを受けることとなり、実に厄介なことになりますぞ!)。

最近「人工知能ロボット(AI)」の高度化に従って、内外でこんな予測がなされるようになりました。「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業につくだろう」「2030年には日本の労働者のおよそ49%の仕事が、ロボットや人工知能によって代替されるだろう」。未来予測のひとつですが、私たち親世代では計り知れない職業状況が到来します。親によるアドバイスが時代遅れで陳腐なものとなり、無力感にさいなまれることにもなるでしょう。さて、人工知能に代替されにくい職業はとなると、「抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他社との理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業」だとして、医療ソーシャルワーカー、映画監督、ゲームクリエーター、外科医などが挙げられています。

この未来予測もそうですし、大学の入試改革もそう、皆さんにこうしてご説明しながら、私は何とも言えぬ感慨、それは一種のむなしさに似たものなのですが、そうした負の気持ちに取り込まれている自分に気づきます。いずれの変化も、学歴があって、頭の切れるヤツ、地頭力のあるヤツは大いにもてはやされ、頭の弱いやつ、暗記だけが得意なヤツは初めから排除されているように私には感じられます。私の思考回路には、「まずは弱者の視点」といったものが習性として存在していますので、歯切れのよい説明文にはなっていません。

 

でも、皆さんのお子さんは心配ありません。どの子も自己成長力をそなえ、親の予想をはるかに超えたところで活躍します。親は深い愛を持って子どもの人格を尊重し、見守っていくだけでいいのです。どんな社会になっても、きっとやってくれます。我が子を、そしてその将来を前向きに、ポジィティブに見てあげことが大切なのです。たとえ現在が冴えなくとも、お母さんの子は“大器晩成型”!です。おおいに期待して下さい。

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