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教え子4人の訪問をうけて

2015.09.18 塾長ブログ

 度量の狭い自分が情けなくなります。先日も妻との会話の中で、「錦織(世界的テニスプレイヤー)のどこがいいのかね。応援する人の気持ちが知れない。おまけにUというブラック企業がスポンサーだろ。」などと一席ぶってしまいました。また別の時には、「読売ジャイアンツほど、汚れたチームはないよね。勝ちさえすれば何でもいいのかね。」と。居酒屋さんでこれをやったら、殴り合いのけんかが始まるでしょう。お断りしておくのは、錦織選手や、ジャイアンツの選手個人を嫌悪し、批判しているのではまったくなく、そのバックグランドが気にくわないのです。

錦織選手は実に恵まれた環境で育ちました。12歳の時から何らかの奨学金を利用したとはいえ、フロリダのテニススクールに留学しています。そうなんです。今やお金がないと一流のアスリートにはなれないのです(もちろん、お金があっても、力量がなければなれないですが)。スポーツも芸術も、先立つのはお金お金お金。これっておかしくないですか。「お金のない人はここまでです」と線引き(差別)されているようで、どうも納得がいきません。税金の使い方が間違っている!

 

ジャイアンツも同様。江川選手の卑怯極まりのない入団事件に始まり、資金力にものを言わせ、各球団の4番バッターを何人も引っこ抜いたり、「巨人軍選手は紳士たれ」と拘束力を強める一方、原監督の浮気問題では相手に口止め料として裏金を回し、果ては監督に何のペナルティーも課さない。選手を束ねる監督が反紳士的な行動をとったら、即クビでしょう。正義が存在しません。やり方が汚すぎる。すべてはお金なんですね。アンチジャイアンツには、きちっとした道理があるのです。

私はこういう組織を生理的に受け付けません。ひとはこんな私を見て、“単なる金持ちへの嫉妬”としか映らないでしょうね。当たっているかもしれません。

 

さて、8月の集中期間中から9月の第1週にかけて、4人の教え子の訪問を受けました。みな優秀な教え子ばかりで、ちょっとばかり引いてしまうかもしれませんが、しばらくお付き合いください。

1人目は宇草孔基君(高3)。高校球児の間では、今や全国区の知名度。8月の後半から始まったU―18(18歳以下)ワールドカップの代表選手です。残念ながら決勝でアメリカに敗れてしまいました。早実の清宮や関一のオコエ選手に隠れ、活躍することはできませんでしたが、すがすがしいプレイを見せてくれました。彼は、二寺小から向中(現桜堤中)に進み、スポーツ推薦Aランクであの野球の名門校、茨城の常総学院に引っ張られて行きました。2年半に渡る寮生活ときつい練習に耐え、春はキャプテンとして甲子園に出場しました。

孔基君は、小中とウエルで勉強を続けたのですが、野球がきついから、部活があるからといった言い訳は一切しませんでした。学力的には小松川や城東高校はクリアーしていました。勉強や野球ばかりでなく、人間的にも抜きん出ていました。何しろ責任感が強い。素晴らしいリーダーシップを発揮してくれる。他人への思いやりの心も忘れない。“デキスギ君”ですね。卒業後も毎年塾に顔を出してくれるという律儀な面も持ち合わせています。

私はよく生徒達に“スポーツバカ”になるな!とはっぱをかけます。勉強だけでもダメ、運動だけでもダメ。友達との関係を含め、バランスの取れた学生が理想だと。孔基君のお母さんと何度かお会いする中で、面白いお話を聞かせてもらいました。常総学院野球部の育ての親、甲子園優勝監督の木内幸夫氏の口から次のような言葉が発せられたそうです。「常総で野球をやりたければ、中学校の成績表を持って来い。おれはバカが嫌いだから、バカは入部させない」木内氏の“バカ”にはまったくの嫌味はないのですが、物を考える力の弱い球児は決してうまくなれない、という木内氏の野球哲学なのでしょう。孔基君も同様なことを話してくれました。「賢さに欠ける選手というのは、同じミスを平気で繰り返したり、試合の大事な場面でミスをします。」

さすが、高校生でも一流のアスリートになると、経験的に鋭い発言をするものです。根強くはびこる日本の根性主義的なスポーツや武道。コーチ、監督のただただ言いなりになって盲目的に努力を強いられる気の毒な選手たち。主体性が育たない分、確かに本番では力が発揮できそうもありませんね。

2人目は、御存知の方も多いYさん(大学4年)。2年前まで非常勤講師で私を助けてくれました。この『いずみ』にも何度か投稿してくれました。小学4年から通ってくれました。中高一貫の都立白鷗中学に合格し、大学は現役でICU。筑波大学(国立)も合格し、GMARCHの上位も総ナメでした。高校3年時において、彼女ほどウエルの滞在時間の長い生徒はいません。学校が終わると直で塾に来て勉強。6時50分ちょうどに持参の二つ目のお弁当(一つ目は学校で)を食べ、そして9時50分までまたお勉強。疲れていようが、何があろうが、このペースは決して変えない。塾で寝ることもない(今年の高3生は寝てしまう子が…!?)。すべてにおいて自己管理のできた生徒でした。精神的な安定感も抜群です。

大学入学後は、3.11直後に南三陸町に入りボランティアに勤しみ、2年の時はジャワ島(インドネシア)の農村地域で約1ヶ月、トイレもシャワーもない虫まみれのバラックにホームステイし、数々のボランティアに参加しました。3年時には1年間、フィリピンの大学に正規留学し、見聞を広げてきました。

8月に来ると言うことは、就職が決まったという報告に違いありません(今年度から8月1日が選考解禁日)。

数社から内定をもらい、最終的にはある商社(総合職)に決めました。彼女から聞き出した「これぞ就活!」という話を4つのテーマに分けてご紹介します。

 

①『学歴フィルター』~企業は学生に対し、「学歴ではなく、人となりを見て採用します」と相変わらずウソをつき続けています。Yさんが内定を得た商社は100人の募集だったらしいのですが、内定者のほとんどは早慶上智+国公立で、GMARCH出身者はちょぼちょぼだそうです。「学歴(フィルター)の怖さを知った」と述懐していました。もちろん、学歴があってもいまだに就活を続けている学生はたくさんいますが。

②『女性フィルター』~「私も一度女性フィルターにひっかかりました」と言う。ある有名企業の説明会に応募したところ、締め切りになっていました。同じICUの男の子の名前を借りて入力すると、応募できたと言います。男女差別はいっこうになくなりませんね。まして、企業社会は即ち男社会ですから。

③『オワハラ』~この言葉、今年の流行語の1つに選ばれることでしょう。オワハラ(就活終われハラスメント)とは、自社の内定者に対して、他社に流れてほしくないため、その時点で就活をやめるよう強要することを意味します。内定者を前にして、「この場で他社に断りの電話をして」「就活を辞めないなら、今後うちを受けないで」「君のスーツ姿を見かけたら、内定は取り消します」……。まぎれもなく脅迫です。職業選択の自由を保障した憲法違反です。中には、大手の選考が始まる8月1日に懇談合宿や海上研修、最終面接などを組み込む極めて悪質な企業も目につきます。Yさんも似たような経験をしたそうです。

④『下痢』~彼女は胃腸が強い。インドをはじめ、東南アジア諸国のほとんどを旅して、怪しいものを食してきました。下痢という経験はほとんどないと言う。しかし、就活期間中は……。内定の報告を待つ数日間、そして不採用の通知を突き付けられたその数日間。ひと言、「けっこうつらかったです」と。そういう時どうしてた?と尋ねると、何しろ外に出て、動き回っていました、と。良きアドバイスになりますね。

3人目にいきましょう。S君(31歳)。小中高と9年間も通い続けてくれました。寺中→日比谷高校→早稲田大学法学部(現役)→中央大学法科大学院→弁護士。お兄さん(現在は2児のパパ)も教え子で、彼も現役で早稲田大学に入学しています。現在は市役所で公務員として勤務しています。お母さんは、ピアノ教室を開き、大変な苦労をしながら女手ひとつで優秀な二人の子を育て上げたのです。

このお母さんと話すたび、子育ては親の物の考え方や生きざまそのものであり、子どもとどれだけ真摯に向き合うことが大切か、教えられます。勉強だとか、学歴だとか、お金だとか、頓着しないのです。人としての生き方や親のあり方、子どものマナー、これにはとても厳しい。

9月初め、S君の結婚式に呼ばれました。きれいになった帝国ホテルの光の間。新婦もまた弁護士。上席は私と妻以外皆、弁護士で固められています。スピーチは弁護士事務所の所長さんに始まり、病院院長、どこかの口の減らない塾長、そして公認会計士。この塾長、マナー知らずですから、新郎に対して「昭和時代のオヤジ臭がプンプンする頑固一徹の青年で、まれに独断的な行動も見られた」などとけなしてみたり、「そう言えば、どこぞの国の首相もどうしようもなく独断的ですね。法律の専門家の言質をあれほどまでに無視し続ける反知性と傲慢さ……」こんなことまで臆面もなく言っちゃう。でも、この塾長のスピーチ、どこでやっても結構受けるのです。知らない人が来て、「スピーチ、お見事でした」なんて言われていい気になり、飲み過ぎて痛風発作におびえたり。

9年間も一緒にいると、塾の先生というよりも、自ずと父的な立場で生徒を見ていることに気づかされます。本音は、かわいくて仕方がない。でも、父的には、文句のひとつも付けて祝福しないと、父としての威厳が保てないというか、まあ、実に低劣なプライドに凝り固まっているわけです(父というものは、いや、この私は)。これが息子ではなく娘になると、話が変わってきます。息子の彼女は大歓迎。妻に黙って、おこずかいをあげちゃう。娘の彼氏ということになったら、彼氏が家にやって来るとなったら。態度豹変。いかに相手の弱点をあぶりだし、嫌味っぽく、彼氏とやらに攻撃をかけていくことでしょう(性悪!)。S君、いつまでもお幸せに!仕事柄、体調管理には気を遣って下さい。

最後の訪問客、H君。あいにく、塾の休みの日に来室。H君ではもはや失礼。今年から江戸川区立○○中学の校長に迎い入れられました。こんな事を言ってくれたそうです。「平野先生と出会って、私は教職の道に入ったのです。」しびれます。お世辞でもうれしい。ただ私としては、これまでに一度も学校の先生になることを、生徒達に薦めたことがないのです。あまりに時間に追われ、有形無形の様々な拘束を受けるからです。自由な授業は展開できないし、アベちゃんやヨミウリ新聞批判なんか、もってのほかですからね。H校長、ありがとう。健康にご留意を!

子どもたちの未来に出会える喜び。教師冥利に尽きます。長生きしないといけませんね。

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