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温かい心を育むことによって、わが子は幸せに

2022.05.21 塾長ブログ

首都圏で私立中学受験者が増加している模様です。一方、教育界では英語交じりの用語が氾濫しています。

AI教育、ICT、DXによる教育サービス、プログラミング、ロボット、オンラインの反転授業、STEM教育……。

予測不能で激変な時代(これもVUCA時代と表されたりします)を生き抜くための人材育成のため、頭の良い人たちが様々な教育戦略を描いています。

 

そして、頭の良い親たちはこうした流れに順応すべく、小中のお受験へとわが子を駆り立てているようにも感じられます。

 

わたしたち親が気を付けなければいけないこと、それは学校的なもの(例えば順位、成績など)や社会階層的なもの(例えば学歴、地位、年収など)に引きずられ、あるいは毒されて、“わが子の幸せ”という教育哲学的な視点を軽視してしまうことです。

 

あの寂聴さんはこんな言葉を残しています。「お子さんに『何のために生きるの?』と聞かれたら、『誰かを幸せにするために生きるのよ』と答えてあげてください。」寂聴さんの生きる信条は「妄己利他」。自分の幸せだけを考えず、他者の幸福のために尽くすことが生きる喜びと語っていました。

 

子どもの脳の大規模研究を行ってきた小泉英明氏は養老孟司氏との対話の中で、「幸せのポイントは『共感』能力、言い換えれば『温かい心』(Warm-heartedness)を育むことにある、それこそ子どもたちが幸せになるための教育の最終目標であると考えています」と述べていました。(養老孟司『子どもが心配』PHP新書 123頁 2022年)

 

実に興味深いですね。脳科学者が、「温かい心」を育むことが子どもの幸せに直結すると言うのです。もちろん、根拠あってのことです。親としてじっくりとかみしめておきたい言葉です。

 

わが子が幼少の頃、元気で優しい子に育ってほしい、と人倫的な願望を口にしていたワタシ、いつのまにか、学校的・社会的なものに囚われているワタシ。なんと親とは欲深な存在なのでしょう。

 

あるがままのわが子でよいではありませんか。十分に優しく育っているではありませんか。わが子が生きている以上に何を望むというのか。ハードルを上げることなく、常に愛情深く見守っているのが、子育て上手な親のあり方であるとわたしは信じています。

 

以下、各学年の素描です。

 

≪小学部≫

 どれほど強調してもしきれないのが、小学時代の読書の習慣。雑誌『週刊新潮』1月20日号には、こんな見出しとリード文がおどっていました。「経済力の学力格差を乗り越える方策は読書 ➡全国学力調査で判明「読解力」は「家庭の蔵書量」に比例 ➡高学年では手遅れ!限られた資金を幼少からの「絵本」「児童書」に ➡裕福・「学習塾」漬けでも親が読書嫌いならこの成績は下位 ➡「経済格差」「遺伝」より「本のある環境」が勝る 裕福でなくてもあきらめるのはまだ早い。ちょっとした読書習慣を

 

持つか否かが、子どもたちの将来を大きく変えることが分かってきたのだ。」

 

著名な心理学者・榎本博明氏の手になる記事ですが、学力格差の大きな要因としての読解量、語彙力の向上、知的発達の促進、豊かな想像力等々、読書の「効能」が挙げられています。わたしとしては「学力向上のための読書」といった偏狭というか実利的な考えは持っていません。読書は“楽しみ”です。

 

授業時間中、年間で3年生は73作品、4年生は87作品、5年生は96作品、6年生は88作品以上、読破していきます。「今日はどんな作品と出会えるかな」、こんな一言から国語の授業が始まります。小学生新聞を読ませたり、その要約作業をさせたりと「読み込む」こと、「書き込む」ことを重視しています。宿題はもちろん、毎日の家読です。保護者の皆様も限られた時間の中で、ぜひ本を手に取るようにしてください。それと、毎日の読書チェック、ありがとうございます。

 

≪中学1年≫

 知的好奇心旺盛な生徒が集まっています。教科(英・数)にもとても意欲的に取り組み、確認テストも上出来です。授業日以外に質問(学校の課題)に来たり、欠席の際は自分から質問教室に参加したり、ウエルを有効利用しています。

 

中1生についておさえておきたいことは、“休ませること”の大切さです。新しい環境下での緊張やストレス、部活動による肉体疲労、本人さえ自覚できていないことがあります。家では十分に休息させてあげてください。話しかけてきたら傾聴に心がけてください。ちょっとくらいだらしなくとも、夏過ぎるまでは大目に見てください。家庭が子どもにとってエネルギー補充の場であり、また安全基地となるようご配慮ください。

 

≪中学2年≫

 反抗期渦中にあって、特に男の子をもつお母さんは手を焼いていることでしょう。言うことはきかないし、生意気な口は効くは、ぶすったれるは、当然勉強には向かわないは。まあまあ、落ち着いてください。この状態が反抗期であり、ノーマル(普通)です。昨今は「反抗期のない中・高生」の割合が増えているとのことですが、わたしの見るところ、自己肯定感が低い子ほど反抗心が旺盛になる傾向があります。親をはじめとして、他者からの評価や承認が求められてきます。

 

中2生は、とりあえず、部活に積極的に参加して、食べて寝て、塾を休まなければ心配はありません。勉強面では、頻繁になされる小テスト(前回授業の確認テスト)を必ずクリアーさせています。そう、授業日以外に来てやるあの「リテスト」。逃しません。しつこく迫ってまいります。ご協力ください。

 

≪中学3年≫

 いよいよ対外試合のVもぎが始まります。9月からは毎月1回は受け、12月と1月は2回受けるよう伝えてあります。秋以降は、私立Vもぎや自校作成対策もぎを受けてみるのもいいでしょう。ご相談に乗ります。先日、私立高校に関する資料を配布しました。都立高校を第1志望とする生徒にとってとても有益なものとなっています。ご参照ください。

 

今学期はまず、部活に完全燃焼させます。やり切ったという達成感が得られた生徒の、その先の勉強への意欲はかなり高い。部活に消極的であった生徒は、やはり勉強にも後ろ向き。一人ひとりの今後の課題などについては、来月の“お話タイム”(保護者面談)にて。ご質問や不安点などもその時に。そうそう、修学旅行に行けてよかったですね。

 

≪高校部≫

 今年度から高校生にはリクルートの映像授業(「スタディーサプリ」全教科・毎月2,178円)をあてがうようにいたしました。高校によっては義務化されているところもあり、様々な使われ方をしています。

 

コロナ禍にあって、オンライン授業が当たり前になりました。予備校によっては対面授業が少なくなり、映像にどっぷりつかる形式になっています。ウエルの卒業生で、浪人時代映像中心の予備校に通ったのはいいのですが、次から次へと映像授業を勧められ(その分費用が加算されます)、担当者とけんかになり辞めてしまった、こんな話を聞かされました。

 

映像授業のメリットは十分承知しているつもりですが、危惧すべき点があります。かつて日本の精神科医の重鎮・中井久夫氏が「どんなよい治療でもどこか患者を弱くする」と述べていますが、まさに行き過ぎた映像授業どっぷりのスタイルは、生徒を無力な存在にしてしまうという危険性があります。

 

教育は、生徒の教師からの自立にある、と考えていますが、教師べったり(個人指導塾)、映像授業どっぷりの受験生は、独学を基本スタイルとする受験生にはかないません。教師を頼らず、参考書を読み込み、みずから解決していく、そして受験戦略も過去問を解くことによって自分で設計する。

 

こんなちっぽけなウエルですが、高校・大学の合格実績はかなり良いと自負しています。それはすべて、生徒一人ひとりのがんばりと、常に独学を意識した指導方針にあります。

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