『理数科目は、女子よりも男子の方が強いのか?』
理数科目における能力差、性差の問題ですね。感覚的、経験的には、男子が優位ではないかとの仮説が立てられるでしょう。
わたしの経験からは、能力差はないだろうが、理数を苦手とする女の子が目立つ、といったところでしょうか。
学問的にはどうなのか、調べてみました。代表的なものを2点取り挙げます。
1つは、国際的な学力調査PISAの報告書(2015年)の記述です。「数学の成績は女子の方が男子より悪い。」しかし「生まれつきの能力に性別はない」「平等な機会が与えられれば、男女にかかわりなく、同じように最高の成績を収めることができる」(PISA in Focus 2015 March OECD)
数学の得点に差があるが、これは見かけの差であって、生得的な性差ではないということですね。それゆえ、男子同様の環境や機会に恵まれれば、男女差はなくなる、こう理解できます。
もう1つは、2019年11月に発表されたカーネギーメロン大学の調査結果です。子ども、成人合わせて264名の男女に、算数の教育ビデオを見せ、その時の脳の活動をMRIを用いて測定しました。結果として、「脳の機能や数学能力、成熟度に性差はない」ということが報告されました。
わたしもこの英語論文に直接あたってみましたが、脳科学の知識がないので、この論文および結論の科学的な優位性については何とも言えません。が、PISAと同様な結果であったことはおさえておきたいと思います。
おおざっぱな印象ですが、中学1年の方程式の文章題になると、男子が苦戦し、立体の表面積や体積になると女子が苦戦し、中学2年の1次関数になると女子が再び苦戦する。小学時代算数が苦手だった子は、すべての学習内容に大・大苦戦を強いられることになります。
しかし、これらはあくまでも一教師の日常的な感覚、思い込みであって、現時点で理数科目における男女の能力差・性差を説明できる生物学的な論拠は見つかっていない、こうまとめることができるのではないでしょうか。
『男子の方が理数系に強い、得点も高い、プログラマー、エンジニアなど圧倒的に男子の方が多い』
この性差を解くカギは、能力差ではなく、文化的・社会的な要因の差ということになります。
例えば戦前からの日本の女子教育、その柱は「良妻賢母」。女子に学問はいらないのです。算数が不得意でも構わないのです。数学ができなくても、英語や国語ができていれば、社会でどうにかやっていける。こうした、いわば社会からの有形無形の「刷り込み」や「暗示」というものが、女子の理数離れの大きな原因になっているのではないでしょうか。理数科目が不得意というのは、ステレオタイプによって恣意的につくられた刷り込みに他ならない、わたしはこんな風に感じています。
自身を振り返っても、幼いころの長男と出かければ、理数系的な話題を持ちかけましたが、娘にはそうした話は無意識に避けていました。クラスの授業も同様に、女子が多いクラスと男子が多いクラスとでは、脱線話の内容も質的に異なります。わたしもまだまだジェンダーにとらわれてしまっているということですね。男女差ではなく、個人差に注目しなければなりません。反省です。
今回もまたお読みいただきありがとうございます。
台風大接近です。腰痛回復のため、安々の温泉旅行を予定していましたが、キャンセルの可能性が大となってしまいました。残念です。週末が連続して大雨ですね。観光関係の方々、ほんとうにお気の毒です。
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