塾長ブログ

塾長ブログ

blog

看過できない教育データ

2019.12.23 塾長ブログ

4歳の子も、高校3年生の学生も、全く同じ表情を浮かべてチェロ・バイオリン・電子ピアノの音に聴き入っていました。‘美に没入する表情’と言ったら大げさかもしれませんが、わたしは子どもたちのあの面ざしが大好きです。もう十年以上も続くクリスマス・コンサート、生の音の迫力と繊細さに心を打たれた様子です。ホクホクの中華まんじゅうも大人気でした(12月7日[土]実施)。

民主主義の根幹をなす国民財産、「公文書」。隠ぺいに、書き換え、そして廃棄。一度ならずも、二度も三度も。そして、公金たる私たちの税金を使い「‘毒桜’を見る会!?」にアベシンパを招待するなど、誰が見たって公職選挙違反だとわかる。

アベちゃんもスガちゃんもたいしたものですね。真顔で嘘をつき通すのですから。いくら政治の場とはいえ、善人にできる芸当ではありません。二人の顔つきが、‘反社’のコワイオジサン顔に変わってきたと感じるのはわたしだけでしょうか。

ひきかえ、フランシスコ教皇の優しさ溢れるあの相貌。核兵器の廃絶と絶対平和を力強く唱える一方で、アベちゃんは平和憲法を改悪し、戦争のできる国にしようともくろむ。おまけに、核兵器廃絶という国連決議に反対するという歴史的暴挙をやってのけるありさま。いつまでこんな政権を許しておくのでしょうか、日本の有権者は。

さて、ご存知のように、政府は11月1日に英語民間試験の実施を見送る決定を下し、12月には現高2生から始まる共通テストにおける国語と数学の記述式問題について、延期する方向で検討を始めました。

 

結論! 独裁的な政治主導ゆえ、こういう結果になるのです。民主的な手続きを今の政権は避けようとします。様々な分野の専門家、現場の教師、予備校・塾の教師、そして現役の高校生までも交えた研究会を組織し、度重なる会合を開く。その討議の状況を広く国民に知らしめる。こうした手続きなしには、真の教育改革などできないことは教育界の常識。すべてが官邸主導で強引に執り行われ、まさしく民主主義、民主教育の破壊行為に他なりません。

 

今年最後のお便りを政権批判で終わらせることはできません。締めくくりとして明るい題材をご用意したかったのですが、現状がそうはさせてくれません。「驚きの教育関連数字・ワースト3」をピック・アップして、子どもたちを取り巻く日常の一端を見てみようと思います。

1つ目の数字は不登校に関するもの。小中学生の不登校数は5年連続で増加し、昨年度は過去最高を記録しました。また、NHKによるLINE上でのアンケート調査(2018年 18,000人対象)によれば、「5人に1人が“隠れ不登校”」ということです。隠れ不登校とは新しい用語で、①部分・別室登校(一部の授業のみの参加・保健室登校など) ②仮面登校(ほぼ毎日、行きたくないと思っている生徒)の2点を指します。中学生の5人に1人(23.7%)が隠れ不登校とのことです。すべての中学生が‘不登校予備軍’であると言っても言い過ぎではないかもしれません。

不登校の理由は大別すると以下の3点にまとめられます。

①学校生活に起因する不登校(友人トラブル、いじめ、担任との問題) ②家庭生活に起因する不登校(親子関係をめぐるトラブル、家庭内不和、家庭環境の激変) ③本人に起因する不登校(性格的な問題、情緒不安定、発達障害) ただし、「重層決定」と言って、たったひとつの理由で不登校になることはめずらしく、さまざまな要因が折り重なっているケースがほとんどです。また、学校に行けない、教室に入れない理由が、本人にもはっきりとわからないことも多い。「何で行けないの?」との問い詰めは無駄なのです。

経験上、初動時の注意点は、1つは、親がじたばたすることなく冷静に受け止めること。2つは、よく言われる‘登校刺激’を与えるか否かという前に、たっぷりと休息の時間と環境をあてがうこと。3つは、ひたすら子どもの話に傾聴し、怒りなどの感情をしっかりと受容すること。家が落ち着ける場で、親が受容的であれば、時間がかかろうとも子どもは進むべき道を歩んでいくものです。

何ヶ月かかるかは本人に寄りますが、自らの考えや感じ方、そして置かれている状況を客観視できるようになったら、登校刺激を与えてみるなり、フリースクール、不登校特例校、通信教育なども当たってみます。

不登校が増加の一途をたどっているということは、現代っ子と旧態依然とした「学校的なるもの」に齟齬(そご)、ミス・マッチが起きていると考えることができます。今の子がひ弱になったとか、過保護に育てられてわがままになったとか、こうした‘居酒屋談義’では不登校の解決のための糸口さえ見い出せません。

 

解決のカギのひとつが、例えば、奥地圭子氏の「明るい不登校」を目指すフリースクールや不登校特例校であり(『明るい不登校~創造性は「学校」外でひらく』NHK出版新書 2019年)、そして多くのメディアでも取りあげられた世田谷区立桜丘中学の教育実践となるのかもしれません。

 

わたしは西郷孝彦校長による一連の実践を「個性重視・民主的自由教育」と勝手にネーミングさせてもらいました。

 

「校則なし、定期テストなし、宿題なし、チャイムもならなければ、教師からの強い叱責もなし。差別もいじめもなし。あるのは、子どもたちの笑顔だけ。服装も自由、髪型も自由。廊下での勉強も自由。みんな自由に意見を言い合い、その議論で学校が変わり続けていく……」(『校則をなくした中学校 たったひとつの校長ルール』小学館 2019年)信じられませんね。私立ではなく、区立の中学の話です。

アベ派のオジサンたちが大好きな道徳だとか、規律、伝統、愛国などはまったく排除されていることに気づかされます。そんなもので中学生の自己成長が図れるなどと考えるノーテンキな指導者はいません。中1生定員190名中、90名が学区外生徒というのですから、その教育効果はお墨付き。難関高校進学者も多く、全体的な学力も高いとのことです。

さて、2つめの数字は、3年ごとに実施されている国際的な学習到達度調査(PISA・15歳対象)において、日本の読解力の順位が4位(`12年)➡8位(`15年)➡15位(`18年)と続落しました。前回調査からコンピューター使用型のテスト形式になり、不慣れであったことはいがめませんが、自分の考えを根拠にしながら説明していく自由記述の正答率が極端に低くなっています。

あえて矮小化した言い方をしますが、これは日本の子育て文化の影響も大きい。どうしても子どもには「○○しなさい」「△△してはいけません」といったワン・フレーズの指示的な関わりが多く、「なぜしなければならないのか」「なぜしてはいけないのか」との原初的で論理的な問いの重要性を教えてこなかった。

自ら問いを発して、論理的に考え、結論を出す。それを口頭で、あるいは文章で表現する。こうしたトレーニングが圧倒的に不足しているということです。

もう1点、読解力の平均点が下がった理由を指摘しますと、読解力が極端に弱い生徒の割合が増えたことがあります。そうです。貧困層の学力低下という社会問題が絡んでいるのです。現政権になってから、経済的な格差は拡大する一方です。下層の割合も膨れ上がっています。社会経済的な弱者に対する手立てや政策をなお一層講じなければならないのですが、あの文科大臣の「身の丈」発言に端的に表現されているように、貧乏人は貧乏人らしく、おとなしくしていればいい、こんな卑劣極まりない強者の思想が露呈しました。子どもには一切の責任はないですよね、親の経済力は。

余白がわずかとなってしまいましたが、最後の数字は、2018年までに届け出のあった9歳以下の行方不明者は1,216人、SNSが原因で犯罪に遭った18歳未満は2012年1,076人➡2018年1,811人に増加、というものです。さらに驚かされるのは、未成年者の事件は、いきなりさらわれるのではなく、自分から出向いて行ったケースが全体の8割を占めている点です。

先月の栃木少女連続監禁事件。小6の少女も15歳の少女も、自ら出向き、合流していました。二人に共通するのはSNSで誘われたことと、“家も学校も嫌”ということです。一方、日常的には何の問題も見られない子も、SNS上で共通の話題で盛り上がり、そのノリで好奇心や冒険心なのか、大人の男性に直接会いに行ってしょう。警戒心や危険察知力が稼働しない女子が、統計の上からも信じられないくらい大勢を占めています。お父さん、お母さん、スマホ管理はできていますか?!

親からすると、思春期はやっかいもので、見通しの立たないしろもの。愛すべき‘暴れ馬’の調教で大切なのは、“暴れることを前提に、心を常に平静に”だそうです。

 

ご拝読ありがとうございます。

お身体には十分ご留意され、良いお年をお迎えください。

わたしは12月26日(木)から始まる冬期講習に専念いたします。

menu