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親の「勉強しなさい!」は百害あって一利なし(その1)

2022.11.29 塾長ブログ

11月14日(月)から“お話タイム”(保護者面談)が始まりました。お忙しい中ご苦労様です。

 

あるお母さんの「自己反省」から始めさせてもらいます。

 

「先生、私、わかってはいるのですが、ついつい『勉強は?』と口うるさく言ってしまうのです。テスト前なのに、のんきにスマホをいじっている我が子を見ると、自分が抑えられなくなってしまいます。」

 

お母さんに感情移入しつつも、学問的なお話をさせていただきました。

 

 

いまや一線級の教育社会学者・本田由紀氏が上梓し、「大佛次郎論壇賞」を受賞した『多元化する「能力」と日本社会─ハイパー・メリトクラシー化のなかで─』(NTT出版、2005年)、17年もたっていますが、内容は新鮮そのものです。

 

氏の魅力は、わたしのように感情や怒りで筆をすべらすことはいっさいなく、意識調査のデータを理性の力で丹念に読み解いていく点にあります。先輩教授や政治的イデオロギーの圧力にも決してブレを見せずに、冷静にデータの分析にあたります。親子のコミュニケーションに絞って、その分析結果のみを引用します(何をもって「親子のコミュニケーション」としたか、あるいは何%であったかなど、詳細については紙幅の関係上省略します)。調査結果に耳を傾けてみましょう。

 

 

1〉「親が『勉強しなさい』と言うような表面的なプレッシャーだけでは、子どもの『努力』は形成されない。

 

そうではなく、日頃からの親子の密な会話や親からの高い期待、子どもに身体化された生活習慣などの、

 

一朝一夕には成立しえない家庭の質的なあり方が、子どもが『努力』を、特に『開かれた努力』を遂行す

 

る『能力』をもてるかどうかを決定的に左右しているのである。」

 

 

「家庭の質的なあり方」と言われると、ウーと、うなってしまいますね。わが家もまったく自信がありません。

逆読みすれば、子どもの努力する能力は、家庭のあり方に大きくかかっているということになります。

 

努力しないのは、子どもの側の問題ではなく、親のあり方や家庭環境にある、ということになるのでしょう。

子どもは救われ、親は追いつめられますね。

 

前述したように、この結論はあくまで意識調査の結果分析であることを忘れないで下さい。

「データに従うと、こういう傾向が強く出ていますよ」位で理解して下さい。

親子や家庭のあり方を振り返り、再考するための「材料」です。

 

「家庭の質」を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。

残念ながら本書は学術書であって、ハウ・トゥー的な記述はいっさいありませんが、キー・ワードを掘り下げて考えてみましょう。

 

キー・ワードは「親子の密な会話」「親からの高い期待」「身体化した生活習慣」の3つですね。

 

内閣府の調査が発表となりました。新聞による要約を記すと、「父親の4人に1人が子どもと触れ合う時間がほとんどなく、母親も接触時間が減り、家族のコミュニケーション不足が浮き彫りになった」と。

 

わたしが特に気になったのは、2000年調査と比べると、「ほとんどない」が14%から23%と9ポイントも増えている点です。また、母親についても、30分くらい」が24%で6ポイントの増加、「ほとんどない」も2ポイント増となっています。

 

親子で触れ合う時間が、全体的に減少していることが如実に示されています。長時間労働にたずさわる父と母の疲れた姿がわたしには見えます。「触れ合う時間」と「密な会話」には、若干の違いはあるものの、コミュニケーションとして同質のものと見てよいでしょう。会話の質と量、振り返って検討してみましょう。

 

キー・ワード2点目の「親からの高い期待」とは、わが子の課題や目標のハードルを上げるという意味ではなく、わが子を人として尊重する親の謙虚さ、とわたしは解釈します。欠点やいたらなさをやたらに叱責し、自己否定感を強化させてしまうような親の姿勢は、いますぐに改めなければなりません。

 

キー・ワード3点目の「子どもに身体化された生活習慣」、これはいまとなっては……。良い習慣をいくつも獲得できた子は幸いですが、そうでない子は、たとえば読書習慣、学習習慣、あいさつの習慣、時間の管理などが身についていない子、子どもに責任を押し付けるわけにはいきませんね。

 

 

子どもの欠点や短所、やる気のなさを指摘して、叱責するのは実に簡単なこと。

しかし、これは親の役目ではありません。

 

大切なことは、わが子がなぜそうした「マイナス面」を抱え込むようになってしまったのか、わが子の立場に立って、また寛容な人間論に立って考えてあげることではないでしょうか。

 

“子どもに寄り添う”とは、子どもの「マイナス面」をも無条件的に引き受ける、あるときは笑い話にして通り過ぎる、こうした『親側の楽観主義』にあるとわたしは考えています。

 

そうです、わたしたち親も欠点や短所だらけです。

かんぺきな親などいません。

 

そして子育てに失敗などありません。

あるのは親のエゴ。心配すべきは親自らの自己本位性。

 

楽観主義と謙虚さをもってわが子と関わっていきたいものです。

 

楽観主義の裏付けになる概念は、「子どもの自己成長力」です。

別の機会に。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

寒がりなわたし。

朝夕の気温の低下に順応しきれていません。

みなさまもどうかご自愛くださいませ。

 

 

 

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