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黙ってはいられない、トライの教材に

2025.06.07 塾長ブログ

墨田区 東向島 学習塾 ウエル学院平野進学教室からのお便りです。

 

「家庭教師のトライ」で使われている教材に、大きな誤りがあり、トライ側は謝罪文を掲載しました。

 

その箇所を引用しますと、「この病気(水俣病━平野注)が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです。妊婦さんが水俣病にかかり、生まれてきた赤ちゃんまでもが発症することがありました。」というものです。

 

 

ただ一言、“まったくもってとんでもない記述”です。

何をもって“とんでもない”のか。

 

1つは、教材執筆者であろう人の、あってはならないほどの不勉強さです。

 

わたしも年々、特に数学の授業では計算ミスを犯すことが多くなってきました。

その度生徒達には、「誰がミスに気づくか、試しただけ」なんて言い訳を言って、お笑いで済ましてしまうのですが。

 

回り道をさせてください。

アカデミックな世界で、わたしが一方的に 『師』と仰ぐ方が何人もいます。

そのお一人が水俣病患者を支え続けた医師・元熊本学園大学教授 原田正純先生(1934年~2012年)です。学生時代に読んだ『水俣病』(岩波新書 1972年)以来、先生の思想と行動に心酔してまいりました(原田先生や水俣病についてはだいぶ前のブログになりますが、 「宝子たち」 2012年 9月をぜひご一読ください。何人もの保護者からお褒めの言葉をいただいた記憶があります。次回ブログにて再録いたします。)。

 

 

先生の研究者としての実績は、「胎盤は毒物を通さない」という当時までの医学的な通説を世界で初めて覆したことです。母親の胎内で有機水銀に侵されて起こる「胎児性水俣病」を科学的に立証したのです。つまり、生まれてきた赤ちゃんは、母親の胎盤を通じて有機水銀に侵されたのであって、「遺伝」などでは決してないのです。

 

 

このような世界的な大発見を見逃すトライの執筆者、とりわけ子どもたち対象の教育教材においてあってはなりません。

 

“とんでもない記述”と指摘するもう1つの理由は、水俣病に関するこのような誤った認識のため、水俣病患者とその家族、親族に対していわれなき偏見や差別(就職、結婚など)が横行したという歴史的な事実の存在です。

 

厳しくい言えば、トライの「水俣病遺伝説」は、当時の差別主義そのものと指摘されても仕方がありません。

 

 

前回までのブログ、沖縄戦やひめゆりの塔への自民党議員の科学性なき歴史観と同様に、学問上の不勉強や無知は、偏見や差別を助長し、結果、罪なき多くの人々を苦しめることにもなるのです。

 

 

偶然にも数日前(6/4)、6年生のKさんが読書の時間でウエルの課題図書の1冊 『水俣の赤い海』 (原田正純 フレーベル館 1986年)を読み終わったところです。

彼女にはタブロイド判『知る水俣病』(朝日新聞社)を手渡し、さらなる学習を進めてもらいました。

 

わたしもウエルの生徒達も必死になって学びに取り組んでいきます。

 

学びに終わりはありません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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