いきなりですが、お母さんにとって『幸せ』とは一体何でしょうか? 古今東西の哲学者や文学者、宗教家によって様々に論じられてきた幸福。最近、工学部の教授が「因子分析」という科学的な手法によって、「幸せは『夢がある』『人とのつながりがある』『前向きである』『人の目を気にしない』という4つの因子からなる」ことを明らかにしました(慶応大学 前野隆司教授)。
ごくありふれた内容で“いまさら感”があるのですが、私にとっての難敵は「人の目を気にしない」という因子。“あるがまま”“ありのまま”の自分で生きていきたいと思う。しかし、現実はそうは簡単にはいかない。見栄を張ったり、虚勢を張ったり、自分以上の自分を見せつけようとしたり、心に曇りを抱きながら生きています。まだ若かりし頃は、そうした不正直な自分の内面のあり方を忌み嫌い、自己嫌悪に陥っていました。ところが、大学に通うある卒業生から同じ悩みを聞かされ、返答に窮していたところ、私の口が勝手に次のような言葉を吐いていました。
「神、仏でない限り、人間は皆何らかの欠点や醜さを抱えながら生きている。そうした醜さに自分の心が押しつぶされてしまうのではなく、その醜さの存在を素直に認めて、その上でそれを他人に悟られないよう日々、生産的な努力を怠らない。醜さや欠点などに対して、主体的な働きかけによって、克服はできなくとも、軽減し、自己成長につなげていく。どうだろう。」
ウエルのお母さん方へ。子どもを離れたところで自分自身の夢をもち、実現に近づけていきましょう。子どもから早く「自立」して、お母さんなりの生き方を模索していってください。人生90年ですから。
さて、今、アメリカの教育界で盛んに叫ばれているターム(用語)があります。『非認知スキル』と呼ばれているものです。親たちの間でも、子ども達の将来的な成功は非認知スキルの獲得にかかっている、こういった認識が広まっています。
IQ(知能指数)や学力、記憶力など数値化が可能な能力を「認知スキル」、それに対して気質や性格(やり抜く力、自制心、勤勉性、意欲、思いやり、社交性、楽観主義、自尊心など)、目に見えない力を総称して「非認知スキル」と言います。昨今、この非認知スキルが経済的・社会的な成功に大きな影響を及ぼすという調査結果が次々に報告され、注目を集めています。
いくつかの調査結果を私なりに要約しますと、非認知スキルを高める質の高いプログラムを幼児期より継続的に行っていくと、プログラムを受けなかった人と比べ、成人後において、認知能力、学歴、雇用、所得、社会性、コミュニケーション能力、非行・犯罪など生活のあらゆる面で歴然とした差が出てくる、ということです。子どもに対するプログラムに加え、親向けのプログラム(家庭環境の整え方、子どもとのコミュニケーションの取り方、学習サポートのやり方など)を定期的に実施することによって最大の効果が得られることもわかってきました。こうした報告を受け、教育経済学者のあいだでは幼児教育にこそ最大の税金を投資すべきだ、という主張が目立ってきました。
注意すべきは、非認知スキルは幼児期に実施するのが効果的だ、と言っているだけであって、学童期以降では手遅れというわけではありません。非認知スキルは後天的なものであり、物的・人的な環境の産物です。中学や高校からでも十分に身に付けることが可能です。
調査に携わったある学者は、とりわけ社会的な成功に関しては、知性でもルックスでも身体的な健康でもIQでもなく、「やり抜く力(Grit)」、そして「ストレスの対処能力」が何にもまして求められてくると断言しています。
いじめやブラック企業による強制労働に対しては、このGritを発揮してはいけません。自分の夢の実現のため、あるいは社会正義のためには、進んで逆境や困難に立ち向かっていきたい。子どもを鍛えそして非認知能力を身に付けさせていく、こうした観点をもってわが子と接していくことも親の務めとなりました。
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