3回にわたり、子どもの学習意欲について考えてみたいと思います。ウエル学院月刊紙『いずみ』(271号)から抜粋いたします。
「もう少しやる気をもって取り組んでくれたら」、「もっと意欲が欲しい」、どの保護者の方も一度は口にする言葉ですね。まずは学習意欲の起こらない原因から見ていきましょう。教育心理学からは、次の6点が挙げられます。①社会的状況 ②からだに原因 ③知能・学力に原因 ④性格に原因 ⑤家庭環境に原因 ⑥学校環境に原因
①社会的状況については、これまで何度か指摘して参りましたが、いわゆる「幸せ方程式」の崩壊を挙げておきます。皆様の世代は、「より良い高校→より良い大学→より良い企業」を追いかける時代でした。勉強さえしてれば、それなりの幸せが保障されていました。勉強への動機付けや圧力装置が、社会の中にしっかりと埋め込まれていたのです。
今はどうでしょう?少子化に伴う入試の易化や推薦入試の増加により、受験への圧力が低下しています。さらには、大学を出たところで(上位大学であっても)職は保障されてはおらず、こうした雇用状況の悪化が青少年から学習への意欲をそいでしまっているのです。「勉強なんかして何になるんだ」という冷めた声が、ここかしこで聞かれます。悲しいかな、夢や安定さえも与えることができないのが日本の現状なのです。
③知能・学力に原因 明らかに知能が低かったり、基礎的な知識や一定の学力が身につかなかったりすると、学習意欲はわいてきません。本人の努力だけではどうにもならない壁というものも確かに存在します。こうした場合、子どもに寄り添い、その子のレベルに応じた対応を取らなければなりません。他人との比較は禁物です。勉強ごときで愛する我が子の自尊感情を傷つけてはなりません。ヒラノの教育鉄則のひとつです。
④ 性格に原因 特に取り上げたいのは、意志の弱い子。自分というものを前面に出すことが苦手な子。何事にも意欲的になれない子。本来の資質ならよいのですが、そうではなく、親の過保護や過干渉、逆に過度の厳しいしつけからくる意欲の無さは、問題が根深い。過保護・過干渉によって子どもから生のエネルギーを奪い取り、厳しいしつけによって自体的要求や主体性を磨滅させてしまう。これでは、面倒で大変さを伴う勉強から逃避したって当たり前ですね。学力の低下は必然です。
⑤ 家庭環境 ここではスペースの都合上、2点のみを強調します。1つ目は、親自身の手詰り感です。勉強の大切さやその目的、成果について、説得力をもって語りきれていないのが現状ではないでしょうか。さらには、忙しさのあまり、子どもの模倣の対象である親自身が勉強したり、読書したり、知的教養面に時間を取れていないことも、学習意欲の起こらない原因のひとつです。
親子関係に夫婦関係、家庭内の雰囲気、文化的教養度、こうしたいわばご家庭の環境が、子どもの物事に対する意欲の原動力になってきます。少しでも工夫を凝らしていきたいものです。 (つづく)
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