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子どもの勉強への意欲について(最終回)

2013.11.08 塾長ブログ

さて、学習意欲について貴重な学術論文を2つほど御紹介します。

 1つ目は、学習の目的と学習意欲の関係を明らかにしたものです(辰野千壽筑波大学名誉教授 2006年)。

 まず小・中・高の調査対象者一人ひとりの学習意欲を心理テスト(AAI)で測り、以下の学習の目的から自分に合うものを選択してもらいます。 ア.いろいろなことがわかって楽しいから  イ.自分の持っている力を伸ばすことができるから  ウ.おとなになって役に立つから  エ.希望する学校へ進みたいから  オ.家の人にほめられたいから  カ.友達に負けたくないから

 結論は、「小・中・高とも『いろいろなことがわかって楽しいから』を選んだ者が『学習意欲』が最も高く、『友達に負けたくないから』を選んだ者が最も低くなっている」とあります。

 換言すれば、知的な好奇心が旺盛な生徒ほど学習意欲が高く、「友達」「親」「希望の高校」など外発的な動機に支配されている(これを「外発的動機づけ」と呼びます)生徒ほど意欲は低くなる、ということです。

 授業をしていても、「オモシロイ!」とか「へー、ソウナンダ!」「ナルホドー」と思わず言葉を漏らしてしまう子がいます。私の出題する脳ミソトレーニング問題に、大きく目を見開いて興味津々で取り組む生徒がいます。一方、見た瞬間に無関心を装う生徒もいます。前者は例外なく知的レベルが高く、考えることが好きで、成績も優秀です。これを「自ら『する』学習スタイル」(専門的には「内発的動機づけ」)と言って、「他者から『させられる』学習スタイル」=外発的動機づけとは区別しています。

『させられる』勉強を『する』勉強に変換する、教師、親に課せられた役割です。

 もう一つの調査論文(柏木恵子東京女子大学名誉教授 1984年)については、筆者による結論部分のみを引用します。

    「外発的動機づけは内発的動機づけより孤独感、疎外感、圧迫拘束感、自己嫌悪感全てが高い、そして共感性(暖かさ)はより低いのである。このデータは、試験合格やよい学校への手段として、また親からの期待や圧力によって勉強する(されられる)ことが、単に勉強への態度をそのように外発的なものにするばかりでなく、自分自身を否定的、悲観的にみるようになり、他者への温かい思いやりを欠くようになる可能性を示唆している。」

 偏差値や順位に振り回され、自分の欲求を抑えつけられた私立中学受験生が思い起こされます。受験勉強が原因で利己的な性格を強め、人への思いやりや優しさを失うようでは、なんのための勉強だかわかりませんね。

 以上、学習意欲について3回にわたり書き連ねてきました。

 親としての心構えを確認すべく、少しでも参考になればと思います。

 最後のまとめとして、ワン・フレーズだけ書き残します。

  「子どもの自己肯定感を高めれば、おのずと学習へと向かう。」

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