現代の子育ての問題点としてよく指摘されることは、第1に、親と子の距離が
近いこと。 第2に、親同士の交流の場が少なく、親子が地域、社会から孤立化
していること、などが挙げられています。
結果として、子育ての傾向は、「これはダメ」 「あれは認めない」といった禁止
する対応が多くなり、何事にも管理・干渉する支配的な親が増えてきます
(一方、経済的な理由などで、子どもを放任せざるを得ないご家庭も増えている
ようですが)。
特に、若いお父さん、お母さん達は、早く結果が欲しいのでしょうね。「わが子
の成長をじっくり待つ」ことが苦手な親が多くなってきている様子です。
私の見るところ、「わが子の成長をじっくり待つ」ことが不得意なお母さんは、
「条件付きの愛」でしか我が子を愛せない傾向を持っているようです。
親の言う通りの行動をして、期待通りの結果を残せたら愛してあげる、
というのが条件付きの愛ですが、一歩下がって冷静になれば、どんな親も
少なからずこうした「愛」に身を委ね、エゴイスティクな言動をとってしまうもの
なのです。
ようは程度問題です。幼稚園児をもつあるお母さんがこんな話を紹介して
くれました。
「うちの子の友達のA君は、ママがそばにいる時の行動といないときの行動
が天と地ほども違うの。お家ではとってもいい子で、素直で、お母さんの
言うことは何でもハイハイと。ところが、幼稚園の中では最悪で、友達に
ちょっかいは出すわ、意地悪はするわ、年少の女の子に暴力をふるうわで、
問題児扱いされているんです。先生がこうした日常を話しても、一切聞く耳
持たずなんです。」
私が園長先生であれば、A君のママには次のような話をさせて頂くことでしょう。
「お母さんは、A君にとってもとっても愛されています。A君は死ぬほどお母
さんのことが好きですよ。お母さんもそうですね。我が子を愛するがゆえ、
いろいろがんばってきました。私たちも認めています。ただひとつだけ心に
留めて欲しいことがあります。それは、子どもの中にはまれに、親の期待を
非常に敏感に感じ取ってしまって、親の言うなりに『イー子』を演じきって
しまう子がいます。『イー子』を演ずるとは、本来の素の自分を隠し通すこと
ですから、やがては疲れ、ストレスを溜め込むことを意味します。このストレス
は、必ず他者への攻撃性となって現象化してきます。中には、他者ではなく、
自己への攻撃性、たとえばリストカットや薬物依存となって思春期以降に現れ
ることもあります・・・。」
ドイツの著名な精神分析学者、エーリッヒ・フロム(1900~1980)の言葉が
思い出されます。
「愛とは愛するものの生命と成長に積極的にし、関係することなのである」
(『愛するということ』 紀伊国屋書店P35)
我が子の成長にとって何が必要であり、何が善なのか、今一度立ち止まって
考えてみたいものです。
ウエル学院は子どもだけでなく、お父さん・お母さんにもエールを送り
つづけます。
子どもとともに成長していこうではありませんか。内省と学習の時間が求め
られてきます。
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