今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
いそがしさ10倍の毎日ですが、お腹周りに肉がつき、1ヶ月で2キロほど太ってしまいました。
①午前中の寒さに負け、ウォーキングをさぼっている。②年甲斐もなく、食べることに執着が出てきた。③“別バラ”の存在に気づかされ、食後、甘いものに手を出し始める。
ベルトの穴の位置変化が、中性脂肪やコレステロール値の急上昇を物語っています。いやいや、そうではないのです。塾生とともに来たる受験に備え、栄養分を過剰に摂取しているだけです!? だいいち、小太りの方が長寿だと言うし!?などといった言い訳は全く通用しませんね(反省!)。
かなり昔の話になりますが、近くに養護学校が建設されるにあたって、ある地元の主がわたしに反対の音頭を取ってくれないかと頼みに来ました。詳しい説明を待つまでもなく、「養護学校ですか。いいですね。近隣の小中学校との交流会やイベントが実現したら、こんなすばらしいことはありません。教育的な効果も計り知れないでしょう」と。その主さんだか、牛さんだかよくわかりませんが、無言でくびすを返していきました。
現在は南青山の児童相談所の建設反対が話題にのぼっています。
「そんな施設を南青山につくらないで」「土地の価値が下がってしまう」「南青山ブランドに傷がつく」等々。突っ込みどころはいくらでもありますが、中3の国語の授業で「言葉の定義」「概念規定」という用語が出てきた折に、以下のような話をしました。(都立高校の推薦試験を受ける人は、集団討論で使える論法をひとつ紹介するのでよく聞いておくように、との一言を添えて。)
「(港区側と地元の対決の場での仮想発言として)皆さまが南青山という街と文化を愛する気持ち、おおいに理解できました。また不動産価値やブランド力は他に追従をゆるさないことも承知しています。そこでひとつ提案があるのですが、“南青山ブランド”という概念に、弱者に寄り添う街、人間的に寛容な街というヒューマニズムのメンタリティを加えたらいかがなものでしょうか。南青山という街そのものも素敵だけれども、南青山に住む人たちはそれにもまして素敵な人達なんだと。皆さまがよくご存知の“ノブレス・オブリージュ”。フランスの箴言でしたか、その教えは、財産や権力、地位ある人は、社会の模範となり、弱者のために多くの義務を負わねばならない、と認識しています……。」
地域がら、いたずらに横文字など入れてみましたが、「……弱者に寄り添う街、人間的に寛容な街というヒューマニズムのメンタリティを加えたらいかがなものでしょうか」とのくだりで、言葉に敏感な数名の生徒からいっせいに「ウォー」という抑えのきいた歓声が上がりました。定義や概念規定の重要さを学んでくれたようです。
親の収入により私立高校の授業料が、免除・減額されるようになりましたが、都立高校は相変わらずの人気です。推薦試験も高倍率を維持しています。推薦は2日間にわたり、<調査書+個人面接+集団討論+論文>の4項目で合否が決定されます。集団討論は、受験生5~7人で試験官が2~3人、時間は30分前後というのが一般的です。
代表的なテーマをご紹介します。
「新たな国民の祝日と、その内容を考えて発表してください。その後、皆さんで話し合って、国民の祝日として最もふさわしい日をひとつに決めてください。」(小山台高校)
「2020年に東京で行われるパラリンピックでは、ブラインドマラソンという競技が行われます。この競技は、視覚に障がいがある方が走るマラソンです。最も障がいが重いクラスでは、伴走者が必須となります。もしあなたが、その伴走者になるとしたら、どのような点に気を付けますか。これから送る高校生活の抱負を踏まえて話し合ってください。」(青山高校)
両校とも各自の発想力が問われると同時に、「話し合う」という集団性やコミュニケーション能力が強く求められています。
また、討論なのに進行役が決められていないのがミソです。生徒達には、場の雰囲気を察知しながら、自ら進行役を買って出なさいとアドバイスします。どの高校も欲しい生徒の素養の一つは、「リーダーシップ」です。もちろん、司会が務まる力量があれば、の話ですが。
要は、≪人前で、オリジナルな発想を適確な言葉と論理をもって伝え、集団を動かしていく≫こんな力を高校側は求めています。難しいことですが、ここぞという時、親は子の面前でこうした自己主張を見せつけなければなりません。
ITにつづきAI(人工知能)がトレンドです。やがてAIに仕事を奪われるとの脅しにさらされながら、我々一般人はただただ指をくわえて傍観しているだけの毎日です。
海外のそうそうたる巨大企業が設立した国際組織ATC21s。そこが定義した「21世紀型スキル」というものがあります。
①思考方法 1.創造性と革新性 2.批判的思考・問題解決・意思決定 3.学習能力・メタ認知
②仕事の方法 1.コミュニケーション・コラボレーション(チームワーク)
③仕事のツール 1.情報リテラシー 2.ICT(情報通信技術)リテラシー
④社会生活 1.地域と国際社会での市民性 2.人生とキャリア設計 3.個人の責任と社会的責任(文化的差異の認識および受容能力を含む)
これを読み、「うちの子はダメだ!」なんてがっかりすることはありません。あわてることも、不安がることもない。
お母さん方の不安に付け込むのが、悪しき教育産業です(ひょっとしてウエルもそのひとつ!?)。
AI時代とかグローバリゼイションという大看板を背負って、忍び込んでくる業者。ほれ幼児英会話だ、知育教育だ、ほれプログラミングだ、ロボット組み立てだ……。
横浜市でフルタイムの契約社員として働く30代の母親。
「3歳から英語を習わせています。午後6時に授業が始まるので、平日は保育園が終わってそのまま連れていきます。送り迎えが大変で。でも、小学校から英語が始まるというので、早いうちからやっておいた方がいいなと思っています。週末もスイミングの送り迎えがあります。フルタイムの仕事に複数の習い事の送迎が加わり、正直『つらい』と感じています。しかし、周囲には子どもに英語を習わせるママ友も多く、不安でやめることができません。」
「(知り合いの)ママは、子どもを朝5時に起こし、ボール投げの練習をさせています。その後、ピアノの練習をして、プリントのワークをやってようやく小学校に登校。私立中学を目指してがんばっているようです。」(毎日新聞 12月30日)
わたしも知らない概念でしたが、「母親たちに膨大な時間、エネルギー、お金を子どもにつぎ込むよう促す子育てモデル」を『徹底育児』(Intensive Mothering)と呼ぶそうです。ワンオペ育児に徹底育児、いずれにしても、家事、育児、仕事、人によっては介護に振り回される母親たちにさらなる負担をかけるばかりです。母親受難の時代、いつになったら解放されるのでしょうか。
いわゆる文教地区に住まいを構えると、母親は子どもの教育や学校歴に関して、無言のプレッシャーを受けてしまうようです。「不安でやめることができません」との告白に、何とも言えぬやるせなさを感じます。朝5時のキャッチボールママにも、頭が下がります、というか何かに憑かれているようで気の毒、いやこわい!一生懸命に子育てをしているママに、こんなことを言っては無礼千万と反省しつつも、その子どもの置かれた状況に感情移入すると、どうしても同情的にはなれません。
毎日が多忙で、疲れ切っているお母さん方に意見すること忍びないのですが、2点ほど強調しておきたいことがあります。第1点は、勉強です。やはり、親が率先して勉強しなければ子育てに狂いが生じます。例えば幼児英語。まっとうな学者のほとんどといってよいでしょう、第2外国語は、母語(日本語)がしっかりしてからで十分間に合うと断言しています。小学校の正式教科になろうと、日本語がしっかりしている子は何の心配もありません。子どものことで不安を感じたら、大きな本屋に行ってその筋のものを数冊買い求めてください。ネット情報はあてにならないものが多いと承知してください。
第2点は、子育てに関する哲学です。子どもは家庭という居場所があって、他者からの愛や承認を受けていれば、自ずと成長を遂げていきます。早晩の差はあっても、どんな子にも自己成長力が備わっています。社会や時代の要請だからといって、親が率先して動くことはないのです。子どもの人生は子ども自身が決める。子どもが有利な計らいを受けるような功利的な考えは捨てる。“親が先回りをするから、子どもが曲がり、弱くなる”。
皆さんには『子育て楽観主義』をお薦めしたい。親は無くとも子は育つ! リラックス、リラックス!
今年度も宜しくお願いします。
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