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教えすぎと親のしゃべりすぎ

2022.01.19 塾長ブログ

箱根駅伝は青山学院大学の圧勝に終わりました。

マラソンや駅伝には不思議な魅力がありますね。なぜか惹きつけられ、見入ってしまいます。

TVに引っ張りだこの原晋監督。「日頃から考えさせるということをしているので、レースでも発揮できる。私はバシッと答えを言う指導ではない。ヒントを与え、それを選手たちが自分でどうアレンジするかが青山のスタイル。」

一瞬、ハッとしました。未熟ながらもわたしが30年以上、子どもたちと接してきたなかで培った指導理論そのものなのです。
個人指導塾へ通う生徒さんが増えたからなのでしょうか、ベテランのわたしからすると、「教えすぎの弊害」とでも言いましょうか、子どもたちの学習に向かう姿勢がずいぶん後ろ向きになってきたように感じられます。

小学部の教材のひとつ、朝日小学生新聞。一面を読ませたり、要約の作業をさせますが、元旦の紙面の新春教育対談で開成の野水校長がこんな発言をしていました。

 

「考えさせることが1つのキーワードです。開成の先生たちは1つのものを押し付けず、生徒それぞれの個性を伸ばすことの手伝いをしてくれています。(中略)新聞や本をしっかり読んで、今の日本の動き、世界の動きに対して、ぜひ自分の考えをもって主張してみてください。」

ポイントは3つです。1つは、考える習慣。2つは、新聞や本、読書の重要性。3つは、自己主張と発信力。

 

「考えさせる」という点に関して、わたしたち親が注意しなければならないのは、「親側のしゃべりすぎ」です。これは「教えすぎの弊害」と同一線上にあるものですが、子ども自身が強く深く考えなければならない課題を、親が代わって考え、親の「解答」を披露してしまう。こうした傾向の強い親からは、思慮深い子どもは育ってきません。自分が考えなくても、親が考え、結論的な判断を下してくれるわけですから、“沈黙は金なり”で、黙って親に従うまでです。消極的で、自分の考えを持てない幼稚なパーソナリティの出来上がりです。子どもにとって楽であるとともに、不幸の始まりです。

これまで繰り返し、「子どもの話をじっくりと聴いてあげてください」「気持ちを受容してあげてください」とお願いしてきました。しかし、注意すべきは「子どもに代わって、解決策を提示してしまうこと」なのです。子ども自身に考えさせ、子ども自身に判断させ、子ども自身に行動させる。そして、子ども自身に責任を取らせる。ある時は、あえて失敗をさせるぐらいの親側の覚悟も必要です。どの程度の覚悟まで耐えられるか、親が試されることになります。私がここに言う「覚悟」とは、わが子への信頼度、愛情の深さと同義です。

受験に関連した話では、以下のような報告がなされています。やや長いですが、受験シーズン真っ盛りの折、引用させていただきます。

 

「休校期間中など、生徒が保護者と自宅で過ごす時間が増えた。この2年間に多くの高校教員から聞いたのは、『保護者、特に母親の意向を例年以上に感じる』という意見だ。(中略)リスクの少ない選択肢をわが子に提示したいと考えるのは自然な親心でもあろうし、否定するつもりもない。だが、それが本当に先々の安定に繋がるのかは冷静に考えてほしい。」(倉部史記「事態急変に翻弄される高校生と教員たち」『中央公論』2022年2月号)

 

例えば一般選抜(一般入試)は不安で大変だからといった理由で、早期に決まる「推薦入試」「AO入試」(今年度から呼び名が代わって、「学校推薦型選抜」「総合型選抜」)に進路を変更・誘導させるなど、親のエゴが働いてしまうこともしばしば。行きたいと「本人が強く希望する大学(学部)」ではなく、評定平均値などで「入れる大学(学部)」ですから、当然、留年や中退というリスクが伴います。大学の勉強は抽象度が高いですから、興味ある学問でないと続きません。

現代の親子関係は、友達的でもあり、仲良し親子です。それゆえ、距離が近すぎて親が子どもにとっての『壁』になりえないことが少なくありません。例えば、「お父さん、お母さんともあなたには○○の理由で、スマホは与えません」となぜ貫き通せないのでしょうか。戦えなかった親は、後々、スマホ(ゲーム、ユーチューブなど)に依存的になってしまったわが子を嘆く資格はありません。わが子の性格を鑑み、はまるのは見えていたはずです。

仲良し親子でいいのです。しかしここぞという場面では、とことん戦うこと、拒絶すること、妥協しないこと、こうした一線というか、『壁』になって立ちはだかることも親の務めと言えないでしょうか。

投げやりでも何でもないのですが、子どもはほっとけばよいのです。常に距離を取ってください。子どもに任せてしまいましょう。失敗させましょう。何の心配もありません。愛情光線を常に浴びせかけながら、“子どもには1ミリも期待しない”という哲学を自分の中に確立してください。生きていさえすれば、幸。いやいや、こうした親からこそ、自立的でたくましく、思慮深い子が育っていくものです。

受験生を持つ保護者の皆様、あと少しです。愛情深く、見守ってまいりましょう!!

 

実は、ここまで書いてペンを置くつもりでいました。が、社会事象がそうはさせてくれません。

1つは、トンガ沖火山噴火です。7700㎞も離れた国から、1mもの津波を受けるなんて、自然の猛威には驚かされます。東北の人たちは津波と聞いて、身震いされたことでしょう。生徒たちには1960年5月のチリ沖地震の話をします。世界地図を取り出して、チリの位置を確認させます。地球儀だと、日本の真裏にあることに気づきます。マグニチュード9.5。17,000㎞の海洋を暴走し、途中のハワイを破壊して、約22時間後に日本の太平洋岸に到着。(小学生と中学1年生には、津波の速さを計算させます。)日本全体で3,500戸以上の家屋が壊され、140名以上が命を落としています。岩手県の大船渡が最大の被害で、死者53名でした。教訓を1つ、2つ垂れることも忘れません。自然と闘うなどと愚かな発想は捨てよ。自然と共存するなどと、エゴイスティックな考えの誤りに気づけ。自然は人間との共存など、これっぽっちも望んではいない。(ある男子生徒がすかさず、「先生それいただき。都立の作文問題に使わせてもらいます」と。(笑々))

2つ目の事象はオミクロンの感染力。

1日2件の割合で、学級閉鎖の報告を受けています。学校からの通知メールを送っていただくなど、塾の運営にも助かっています。なお、学級閉鎖になっても濃厚接触者でなければ、塾の授業に参加してください。すべて保護者のご判断にお任せます。

幸いにして、ホワイトボード上部の窓と教室入り口のドアが全開できますので、常に風が通り抜けて、換気は抜群です。暖房をきかせながらの授業ですが、問題はありません。なお、この1、2週間の感染状況を見て、特に入試直前の中3生クラスにはオンライン授業の導入を考えています。追ってご連絡いたします。受験生を持つご家庭では、マスクの着用や、食事時間を別々にするなど、できる限りの工夫をお願いいたします。

 

3つ目の事象。東大前で高校2年生による刺傷事件。

ひと昔前でしたら「受験ノイローゼ」「受験エリートの挫折」などの言葉がおどっていたことでしょう。こうした事件が起こるたび、「受験屋」でもあるわたしは、日頃の教育活動や教育理念を振り返させられます。こんな報道がされました。「テンション高く、自分の通う高校名と偏差値を絶叫していた」「医者になるために東大を目指して勉強を続けてきたが、1年前くらいから成績が上がらず、自信をなくしてしまった」「人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた」

無差別殺傷は連鎖します。絶望が人を自殺へと追い込むことは、悲しいことに世の常。しかし、昨今は自殺衝動が、自らの命のみならず他者への攻撃性に向かう傾向があるように感じられます。彼の行動は決して許されるものではありません。

 

ただ一言、彼の絶望感や心の痛み、そして認知のゆがみに気づいてあげて、配慮的に関わってくれるものはいなかったのか、残念でなりません。

 

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