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時には、子どもの前に立ちはだかる『壁』に

2022.11.22 塾長ブログ

マラソンや駅伝には不思議な力がありますね。なぜか惹きつけられ、見入ってしまいます。

TVに引っ張りだこの青山学院大の原晋監督。
「日頃から考えさせるということをしているので、レースでも発揮できる。私はバシッと答えを言う指導ではない。ヒントを与え、それを選手たちが自分でどうアレンジするかが青山のスタイル。」

一瞬、ハッとしました。未熟ながらもわたしが30年以上、子どもたちと接してきたなかで培った指導理論の中核そのものなのです。

個人指導塾へ通う生徒さんが増えたからなのでしょうか、ベテランのわたしからすると、「教えすぎの弊害」とでも言いましょうか、子どもたちの学習に向かう姿勢がずいぶん後ろ向きになってきたように感じられます。

小学部で使用している教材のひとつ、「朝日小学生新聞」。
一面を読ませたり、要約の作業をさせますが、今年の元旦の教育対談で開成の野水校長がこんな発言をしていました。

「考えさせることが1つのキーワードです。開成の先生たちは1つのものを押し付けず、生徒それぞれの個性を伸ばすことの手伝いをしてくれています。(中略)新聞や本をしっかり読んで、今の日本の動き、世界の動きに対して、ぜひ自分の考えをもって主張してみてください。」

ポイントは3つです。1つは、考える習慣。2つは、新聞や本、読書の重要性。3つは、自己主張と発信力。

「考えさせる」という点に関して、わたしたち親が注意しなければならないのは、「親側のしゃべりすぎ」です。これは「教えすぎの弊害」と同一線上にあるものですが、子ども自身が強く深く考えなければならない課題を、親が代わって考え、親の「解答」を披露してしまう。

こうした傾向の強い親からは、残念ながら思慮深い子どもは育ってきません。
自分が考えなくても、親が考え、結論的な判断を下してくれるわけですから、“沈黙は金なり”で、黙って親に従うまでです。思考は停止してしまいます。

消極的で、自分の考えを持てない幼稚なパーソナリティの出来上がりです。子どもにとって楽でありますが、自分自身を生きていけないという意味で不幸の始まりです。

これまで繰り返し、「子どもの話をじっくりと聴いてあげてください」「気持ちを受容してあげてください」とお願いしてきました。しかし、注意すべきは「子どもに代わって、解決策を提示してしまうこと」の悪弊なのです。

子ども自身に考えさせ、子ども自身に判断させ、子ども自身に行動させる。

そして、子ども自身に責任を取らせる。

ある時は、あえて失敗をさせるぐらいの親側の覚悟も必要です。

どの程度まで耐えられるか、親が試されることになります。親に覚悟が求められてきます。

私がここに言う「覚悟」とは、わが子への信頼度、愛情の深さと同義です。

受験に関連した話では、以下のような報告がなされています。やや長いですが、引用させていただきます。

「休校期間中など、生徒が保護者と自宅で過ごす時間が増えた。この2年間に多くの高校教員から聞いたのは、『保護者、特に母親の意向を例年以上に感じる』という意見だ。(中略)リスクの少ない選択肢をわが子に提示したいと考えるのは自然な親心でもあろうし、否定するつもりもない。だが、それが本当に先々の安定に繋がるのかは冷静に考えてほしい。」(倉部史記「事態急変に翻弄される高校生と教員たち」『中央公論』2022年2月号)

 

例えば一般選抜(一般入試)は不安で大変だからといった理由で、早期に決まる「推薦入試」「AO入試」(呼び名が代わって、「学校推薦型選抜」「総合型選抜」)に進路を変更・誘導させるなど、親のエゴが働いてしまうこともしばしば。行きたいと「本人が強く希望する大学(学部)」ではなく、評定平均値などで「入れる大学(学部)」ですから、当然、留年や中退というリスクが伴います。大学の勉強は抽象度が高いですから、興味のわかない学問に4年間も費やすのは苦痛そのものです。せっかくの大学生活が、暗く沈んだものになってしまいます。

 

現代の親子関係は、友達的でもあり、仲良し親子です。それゆえ、距離が近すぎて親が子どもにとっての『壁』になりえないことが少なくありません。

例えば、「お父さん、お母さんともあなたには○○の理由で、スマホは与えません」となぜ貫き通せないのでしょうか。戦えなかった親は、後々、スマホ(ゲーム、ユーチューブなど)に依存的になってしまったわが子を嘆く資格はありません。わが子の性格を鑑み、はまってしまうのは見えていたはずです。

仲良し親子でいいのです。しかしここぞという場面では、とことん戦うこと、拒絶すること、妥協しないこと、こうした一線というか、『壁』になって立ちはだかることも親の務めと言えないでしょうか。

 

投げやりでも何でもないのですが、子どもはほっとけばよいのです。常に距離を取ってください。子どもに任せてしまいましょう。失敗させましょう。何の心配もありません。愛情光線を常に浴びせかけながら、“子どもには1ミリも期待しない”という哲学を自分の中に確立してください。生きていさえすれば、幸い。いやいや、こうした親からこそ、自立的でたくましく、思慮深い子が育っていくものです。

 

 

受験生を持つ保護者の皆様、あと3ヶ月。愛情深く、見守ってまいりましょう!!

受験生の皆さん、一歩一歩着実に進んでいきましょう!!

インフルエンザにコロナ、神経を使う時期に入りました。
皆様、ご自愛のほど。

 

 

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