「彼女を除いて戦後日本文学は成り立たない」とまで言わしめた大作家・石牟礼道子さんが、先月お亡くなりになりました(90歳)。中高生には「人として絶対に読んでおくべき3冊の小説」として、この15年間変わらず石牟礼道子『苦海浄土』、住井すゑ『橋のない川』、千田夏光『踏まれ草』を薦めてきました。
三重苦に加え、意識障碍に歩行不能と胎児性水俣病に苦しめられるゆりちゃん。
石牟礼さんはゆりちゃんのお母さんに憑依したかのようにこんな言葉を書き記します。
「ゆりはもうぬけがらじゃと、魂はもう残っとらん人間じゃと、新聞記者さんの書いとらすげな。大学の先生の診立てじゃろかいな。そんならとうちゃん、ゆりが吐きよる息は何の息じゃろか。草の吐きよる息じゃろか。うちは不思議で、ようくゆりば嗅いでみる。やっぱりゆりの匂いのするもね。ゆりの汗じゃの、息の匂いするもね。体ばきれいに拭いてやったときには、赤子のときとはまた違う、肌のふくいくしたよか匂いのするもね……ゆりが魂の無かはずはなか。そげんした話はきいたこともなか。木や草と同じになって生きとるならば、その木や草にあるほどの魂ならば、ゆりにも宿っておりそうなもんじゃ、なあとうちゃん」(講談社文庫 269頁)
村上春樹作品のように世界中に愛読者がいていいはずなのですが、かなしいかな石牟礼作品はどれもあまりの美文調で翻訳が成立しないのです。どうか時間を見つけて手に取ってみてください。
さて昨年度の入試を振り返ってみます。
同封の合格実績にあるように、高校入試に関してはけっこうな高校に合格しています。何人もの生徒が異口同音に言っているのは、残り1ヶ月で相当の力をつけることができた、ということです。火曜日を除き、毎日が授業日(もちろん日曜日も)です。嫌がる生徒はもちろんいません。逆に、塾で勉強ができるという安心感をもって来室します。意欲をそぐような生徒はひとりしていません。
えらかったのは私立の単願や都立の推薦ですでに合格を決めた生徒達。都立の一般受験者とともに最後の最後まで気を抜くことなく取り組みました。普通ですと、私立の単願組は1月の末で退塾したり、手を抜くものなのですが、ウエルの生徒及び保護者の方はやはり違いますね。合格すればいいというものではなく、その合格の仕方やプロセスが大切なのです。クラス全員で分かち合えた高校受験でした。
生徒達にはその自覚はないのですが、今年度はこれまでの方法論、教材、授業時間数にかなりの工夫と変化を持たせました。自分で言うのも口幅ったいのですが、これらがものの見事にはまったというか、功を奏しました。都立一般入試のウエルの生徒の平均点は、国語80点、数学77点、英語86点、社会76点、理科70点と高得点です(厳しく採点したので、実際はもうすこし高い点になるはずです)。自校作成校である難関青山高校、墨田川高校にも受験者全員が合格しました。しかし、倍率の高かった城東高校には合格させてあげられませんでした。大学受験で何とかいたします。
中3生、保護者の皆様、本当にお疲れさまでした。私自身にも「お疲れ!」と言わせてください。
今年度は例年にない充実感が得られました。6週間、一日も休まずに授業に集中しました。首や肩がパンパンに張って苦労しましたが、行きつけの整体の先生やワイフの“踏みつけマッサージ”にも助けられ、風邪ひとつひくことなく乗り切ることができました。何よりも、受験生の真摯なまなざしが私を動かしてくれました。
物理的な理由で、大学生や大学院生に通年の授業を任せていますが、最後は私が理科以外の4科目を責任をもって指導します。偏差値を上げるだけでなく、メンタル面やもののとらえ方などについてもアドバイス忘れません。
つづいて大学入試ですが、やはり目立つのは都立青山高校のRさんが現役で国立筑波大学(人文・文化群 比較文化学類)に見事合格したことです。私立大学は見向きもせず、国立一本で勝負に出たことは特筆に値します。家事全般が苦手なRさん。4月からの一人暮らしが心配です。小・中・高と何年も通ってくれているのでおもわず親心が出てしまいます。
一方、3月入試を受けている受験生もいます。ほとんどが高校3年で入塾した生徒です。私が提示した課題をやり切ることができませんでした。文系の場合、社会(日本史、世界史など)の完成度が合否の第一の決め手になります。私が半ば強制する作業を年間を通してやりさえすれば、誰でも合格圏内に入るのですが、できませんでした。というより逃げてしまいました。
高校入試も大学入試も、攻め方や心構えが求められてきます。どのような道筋で頂上まで導いていくのか、一人ひとりみな違います。私には経験値からくる豊富な引き出しがたくさんあります。日々の自らの勉強にも怠りないよう士気を鼓舞します。大切なお子さんをお預かりしているという責任感を再確認し、昨年以上の結果を出していく所存です。今年も1年、どうぞよろしくお願いいたします。
◎保護者との個人面談について(4月以降)
月・火・水・金の14:00~16:15、土曜日の14:00から19:00
授業終了後で宜しければ、月~土の22:00から。お電話にてご予約をお願い致します。
◎生徒との個人面談について
新中3及び高3とはこの3月に行いましたが、今年度の方針として、
定期テストのための自習期間中に生徒との面談をなるべく多く取り入れていきます。
お問い合わせ
0120-630-133